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信級日記 冬 vol.39

令和二年12月18日

7:00 起床。朝食。

目につくところを掃除。

9:00 関口さんの炭小屋へ。

ちょうど窯に火をつけるところだった。

雨は少し降っていたが、風はなし。

木材をチェーンソーでカットし、

窯の中が満杯になるまで木材を入れていた。

白樺の皮がスターター。

北海道ではがんびの皮という。

私も薪ストーブをつける時によく使った。

関口さん、なかなかうまくマッチを擦れない。

「お願いがあります。マッチを擦ってください。」

と関口さんが私に言った。

無事に火がつき、白樺の皮を窯の中へ。

雨が降って湿っているので何度か白樺の皮に火をつけ窯に入れた。

そして手動の風を起こす機械をグルグル回して、火に勢いをつける。

イチローさんが散歩でやってきて、また大きな声で関口さんに話しかけた。

カナタに勤め出したカモちゃんも散歩で通っていった。

炭小屋の雨樋から落ちる雨水はドラム缶に溜まっていく。

なんともいい音だった。

そのドラム缶の水を汲み、窯の炊き口の脇の土の上に垂らし、灰や炭の砕けたものを混ぜ、スコップで練る。

その泥で焚き口の穴を塞ぐ。

一段落すると、

「中で座って話をしよう。」

と関口さん。

焚き口の前に座り、関口さんの話を聞いた。

炭のこと、信級のこと、中国旅行のことなど。

お昼の音楽が流れた。

午前中の撮影は終了。

関口さんも家へと戻っていった。

私たちも宿舎へ戻り、ご飯と味噌汁と缶詰で昼ごはん。

 13:30 午後の撮影へ出発。

川を挟んだ向かいの浅野家へ。

浅野さんは25日から東京へ炭盆を売りに出稼ぎに行く。

持っていく炭盆を選ぶ作業をしていた。

これだけたくさんの炭盆が揃っているところを初めて見た。

関口さんが焼いた炭を買い取り、

適当なサイズにカットし、植物を植える穴をあけ、

植物が大好きな奥さんのユミコさんが、植物を植え付け、

根付くまで世話をして、値段を決め、そして販売。

東京の駅の構内や百貨店などで対面販売をし、

お客さんに炭盆というものを説明しながら販売をしている。

枯れちゃったら、持ってきてくれたら植え直しもしてくれる。

炭盆が縁で信級にきてくれたお客さんもいるそうだ。

都会の暮らしにこそ炭盆は良さそうだ。

炭盆の小さな世界に季節を感じ、愛でられる。

少し大きめの赤い葉をつけた炭盆があった。

「これすごくいいですね。」

と私がいうと、

「これは浅野家の炭盆なんです。いつも販売用のばかりつくっていて、自分の家のがなかったので。」

と浅野さんが言った。

家族の人数と同じ4本の木が植えられていた。

雨もやんだ。

ユミコさんがお茶を入れてくれた。

そして今建築中の作業小屋を案内してくれた。

石坂さんに小屋のつくかたを教わりながらやっているそうだ。

それから、浅野さんは日向畑の貯水地に連れていってくれた。

歩いて10分くらいのところにあった。

中を開けて見てみると、

「今まで見た中で一番水が溜まってるー!

いつも水が出なくなったトラブルの時に来るからかー」

と浅野さん。

「水がいっぱい溜まっているって安心感がありますね。」

貯水槽の上にはいい苔が生えていた。

「これ、炭盆にいいんじゃない?」

と私。

帰り道、浅野さんがしみじみ言った。

「ここへ来る道、脇の草刈りとか、亡くなったマルカさんが一人でやっていたんですね。じゃないとこんな綺麗じゃないですもんね。」

水のトラブルの時は、マルカさんが、「じゃあ、あそこ見て見たら」

と詰まりやすい箇所、壊れやすい箇所を把握していた。

そのマルカさんが亡くなり、日向畑の水のことを知る重鎮がいなくなったのだった。

そして当信神社へ。

しめ縄を撮影。

23日、集落のみんなでこのしめ縄をつくるのだ。

17:00 宿舎へ戻る。

早く帰ってきたので、夕食を作ることにした。

私はご飯と味噌汁。一坪くんが白菜と鶏肉のカレー風味のおかずをつくる。

てっちゃんは最後のバイトを終え、風呂に入って帰ってきた。

3人で夕食。

19:30 さぎり荘へ一坪くんとお風呂に入りに行く。

柳屋さんに電話。

20日、信州新町までバスで来てもらうことにした。

帰ってきて23:00 就寝。

信級日記 冬 vol.38

令和二年12月17日

7:00 起床。味噌汁を作り、簡単に朝食。

台所は大きな窓がある。

雨が少し降っていて、山に雲がたなびいていた。

一坪くんは外に撮影に出た。

私は台所、洗面台など掃除。

浅野さんがヤカンを持ってきてくれた。

てっちゃんの家が水がちょろちょろしか出てないこと、浅野さんは知らなかった。

向かいの浅野さん、加藤さん、亡くなったマルカの兄さんの家は

同じ水源から水を引いている。

川を挟んだてっちゃんちだけ水の出が悪い。

「吉澤さん、言ってくれればいいのに。川を渡しているパイプが詰まっているかもしれない。一度チェックしてみましょう。教えてくれてありがとうございます。」

と浅野さんは言った。

雨が小降りになってきた。

撮影に出発。

長者山方面へ車を走らせる。

どんどん天気が良くなってきた。

開けて集落が見える場所で車を止め、撮影。

雲が湧いてたなびいて。幻想的。

刻々と変わる風景。

長者山の駐車場まで行き、展望台まで歩く。

雲がかかり眺めはよくなかった。

引き返す途中、関口さんの土蔵と畑で撮影。

前に降った雪が草の上に少しあった。

雲が下から上がってきたり、急に強い風が吹いたり、

雨がバラバラ落ちてきたり、目まぐるしく天気が変わった。

お昼になったので、さぎり荘へ。

私はカレー、一坪くんはカツ丼。

そして信級のホープ、心ちゃんの新居へ。

心ちゃんは、イチローさんの家の川を挟んだ向かい、平林さんの裏の家に自分の居を構えることにしたのだ。

行ってみると、家の裏手で何やら作業をしていた。

家の中にあったものを全て出し、自分の荷物の運び込みは終わったそうだ。

家の前には、窯もつくっていた。

ただ、馬屋だった部屋の下に水が溜まっていた。

このままだと住めないので、外のコンクリの側溝を外して馬屋の地面よりも低くして排水できるようにしようと、妹のマヨちゃんと作業しているところだった。

マヨちゃんは心ちゃんの家の部屋を借りて木工の工房を作りたいそうだ。

それを手作業でやっているのがすごい。

大変なことだ。

「根雪になる前に終わらせたいです。」

と心ちゃんは言った。

心ちゃんの家を後にして、車を走らせていると、

関口さんの家の近くで、石坂さんとシェーンに会った。

「かたつむりに泊まっていいんだよ。台所も使えるし。」

と石坂さん。

撮影隊がてっちゃんの家に泊まっていることを

大丈夫かしらと心配してくれている。

「今のところ大丈夫です。どうしてもの時、泊まらせてもらいます。」

と私は言った。

そして関口さんの炭小屋へ。

ちょうど、窯の中へ炭にする木材を運んでいるところだった。

サービス精神旺盛な関口さんは仕事の手を止めて話をはじめた。

「いつも仕事の邪魔をしてしまい悪いので、仕事を続けてください」とお願いした。

いつもはそれでも座って話をし始める関口さんが、今回は仕事の続きを始めてくれた。

私たちは邪魔にならないよう撮影を開始。

こうして、関口さんの炭焼きの仕事をしているところを、私たちは初めて撮影できた。

炭窯の中いっぱいに木材を詰めていく。

穴を泥で塞ぐ。

ああ、こうやって何十年も信級で炭を焼いてきたんだなあ。

途中、イチローさんがやってきた。

いつもの散歩コースとのこと。

相変わらず大きな陽気な声。

もう一人、農機具の会社の人もやってきた。

しばし3人でおしゃべり。

信級の過疎化。このままだと集落として成り立たなくなってしまう。

どうしていったら活性するか、他の過疎の集落の人たちと交流して話し合いをしたい。

関口さんは、いつも言う。

16:00 暗くなってきた。関口さんは仕事を終わらせ、家に帰っていった。

明日、火入れをやるかもしれないとのこと。

明日も来てみよう。

そして夕景を撮りに、まだ行ったことのなかった林という集落へ。

浅野さんの家の前の道を登ってゆく。

山の上の方に集落があった。今は2軒住んでいる人がいる。

また違った雰囲気で、見える景色が違う。

見晴らしのいいところを見つけた。車から降りて撮影する。

いい眺めだった。

日も暮れたので、宿舎へ帰る。

てっちゃんがバイトから帰ってきていた。

バイトは明日が最終日になったそうだ。

浅野さんがきて、水のパイプのチェックを19日にやろうと伝えにきてくれた。

遅くなったので、3人でさぎり荘へ行く。

温泉に入り、晩ご飯はジンギスカンを食べた。

美味しかった。

信級日記 冬 vol.37

令和二年12月16日

7:30 信級へ向かって出発。

雪はなく、快晴。

12:30 のぶしな到着。

予想していた雪景色はなく、秋の枯れた感じだった。

今回は日向畑の吉澤哲明さん(てっちゃん)のお宅を宿舎として使わせていただくことになった。

家の前に車を止めると、向かいの加藤さんの奥さん、メリーさんに会う。

お隣の村田さんのおじいちゃん(みんなはマルカさんと、屋号でよんでいる)が数日前に亡くなり、今日お通夜なんですと話してくれた。

前回、てっちゃんを家の前で撮影していたときに、収穫した白菜を抱えて前を通って行ったおじいちゃんだ。

「マルカの兄さん」とてっちゃんが慕っていた人だった。

撮影に来る度に、一人、また一人と欠けていく寂しさを実感する。

てっちゃんはりんごの配達のアルバイトでいない。

夕方に帰ってくるとのこと。

まずは車から荷物を玄関に運び込む。

てっちゃんの家は昔旅館をやっていたのでいくつも部屋がある。

でも一人暮らしのてっちゃんが使っている部屋は一つだけ。

その他の部屋を見てみると・・・

ムムム・・・かなりの掃除と片付けが必要。

3部屋をなんとか寝られるようにしなくては。

一つ問題があった。

秋の台風以降、水がちょろちょろしか出なくなっていた。

そしてお湯が出ない。

ちょろちょろでも出ているだけいいとしよう。

お湯はガズコンロで沸かせばいい。

あれ、ヤカンが、ない。

使える鍋なども、ない。

一坪くんが到着するまで時間もない。

長野駅まで迎えに行くことをやめ、

信州新町までバスで来てもらうことにした。

とにかく掃除だ。

向かいの浅野さんに電話したら、ヤカンと鍋は貸してくれることになった。

よかったー。

15:30 信州新町へ一坪くんを迎えに行く。

帰りに豆腐や肉、野菜などを買う。

植野家に寄り、ご挨拶。

てっちゃんちに戻り、再び一坪くんと掃除開始。

私は一階の居間の隣の部屋、一坪くんは二階の部屋に寝ることにした。

二階の窓から、かたつむり食堂の方がよく見える。

また違う角度から見る景色もいいなあと思った。

てっちゃんが帰ってきた。

「おお、好きにやって。」

とニコニコと言った。

夕食づくり。

私はご飯をたく。

一坪くんがシチューをつくる。

水もちょろちょろ、お湯も出ないこの状況も楽しめる一坪くんが心強い。

持ってきたチーズ、シチュー、ご飯を3人で食べる。

牛乳と玉ねぎと芋と味噌、あるものでつくってくれたシチューは美味しかった。

明日から天気が崩れる予報。

さあ、明日から撮影だ。

22:00 就寝。

信級日記 冬 vol.36

令和二年12月14日

しめ縄づくりと雪景色を撮ろうと、冬の撮影に出発。

苫小牧まで、凍てつく冬道だった。

まだ16:00にもなっていないのにもう暗い。

19:30の出航が2時間ほど遅れた。

令和二年12月15日

18:00頃、新潟港に到着。

雪はなかった。

これから信級へ走ると夜中になる。

この日は無理をせず新潟港近くのホテルに宿泊することにした。

千代が来た!

千葉県の大多喜で「チーズ工房 千」でチーズをつくっている千代が仲間と一緒に寄ってくれました。

チーズのコンテストで賞をもらったり、情熱大陸に出演したり、

台風にもめげず、相変わらず元気でノリノリの千代でした。

お互い、いいものをつくるべく、精進しよう♪