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信級日記 vol.2

植野翔さん

令和元年5月22日

信級を撮るきっかけをつくってくれた植野翔さん。

米をつくる農家です。

信級の炭焼き職人・関口さんに教えてもらい、炭も焼きます。

その余熱を利用して玄米珈琲もつくっています。

植野香緒理さん

植野さん夫婦の仕事、暮らしを中心に撮影させてもらいながら、

徐々に信級の人たちを撮っていけたらと思っています。

植野家の子供たち。乎陀(カナタ)、功那(イサナ)は双子。2年生。

隣の信州新町の小学校へ通っている。

7:38のバスに乗る。

三男の水渡(ミナト)くんも保育園へ通っている。

植野さん夫婦が大事にしていること、

目指していること、

それを撮っていったら信級の魅力が現れてきて、

その先の明るい未来が見えてくる気がしています。

このサイズ感、山の迫り具合。

この風景。

信級はやっぱり気持ちいい。

毎日この景色を見ながら仕事をしている植野くん。

この風土と一体となる感じなのかな。

田植えの直前。

苗が田んぼに並んでいます。

朝、苗踏みを見学しました。

苗に朝日があたる前に、苗を押し付けるようにしてツユを払います。

苗の根の張り具合や、葉っぱの具合を見て田植えの頃合いを見定めています。

緑が綺麗。

田んぼってなぜか安心感を覚えます。

苗踏みが終わると、ぐるっと田んぼを見回ります。

田植えの前に代掻きやります。

そのために田んぼに水を貯めなくてはいけません。

水が溜まってない田んぼがいくつかありました。

もぐらが穴を掘っているからでした。

その箇所を見つけて、足やシャベルで穴を塞ぎます。

家に戻って機材チェックの準備をしていた時、

玄関先で香緒理さんと立ち話。

何かの話から、お互い同じ時期に同じような辛いことがあったことがわかり、

香緒理さんの気持ちが痛いほど伝わってきました。

そして二人で声をあげてオイオイ泣いていました。

なんでこんなに涙腺が崩壊してしまったのか今も謎ですが、

私も香緒理さんに話して思いっきり泣いたおかげで、

まだ悲しいけど、なんだか吹っ切れてさっぱりした気持ちになりました。

「陽子さん、ちょっと臭いがどうか、小屋に来てみて」と植野くん。

植野家の母屋の隣の私が滞在する予定の小屋へ行きました。

小屋の中に入る前から、猫のおしっこ臭がキツくて、クラクラしました。

床板をはがして新しい板に張り替えをしなければ、

この小屋は使えないということになり、植野くんは早速準備に取りかかりました。

ということで、今回は植野家の2階に滞在することになりました。

鴨林克彦さん

昼ごはんはかたつむり食堂へ。

この日は鴨林さん夫妻が切り盛りしていました。

奥さんの朱実さんは初めてお会いしました。

アルバイトで高校生の龍一くんが働いていました。

龍一くんは宮平の空師・越山博さんの息子さんです。

長針朱実さんと越山龍一くん

私は山菜天ぷら定食をいただきました。

ここにくるといろんな人に会えます。

この日は、吉沢さん、石坂さん、シェーン(石坂さんの愛犬)、イチローさんと会いました。



鴨林さんに肩を揉んでもらっている石坂雄一さん。

石坂さんは山菜を採ったり、イノシシを採ったり、山のことはなんでも知っています。

吉沢哲明さん。かたつむり食堂の建物の持ち主です。

吉沢さんは都会で会社員として働いていて、40歳を過ぎて高齢になった両親のために信級に戻ってきた人です。話し好きでおもしろい人です。

そして会う人会う人に、これから撮影を始めますとご挨拶をしました。

平林一朗さん

「信級小学校の脇から歩いて15分くらいで鹿谷城跡に行けるんだ。そこから本鹿谷(信級の集落のある谷)がよーく見えるぞー。そこからが最高だ!」

とイチローさん。

イチローさんは夕食前に一杯飲みにいつもやってきます。

声がやたらに大きくてとにかく明るい人です。

「俺な、カメラもうすぐ新しいのがくるんだ。そのカメラで鹿谷城跡から写真撮りたいと思っているから、一緒に行こう。」

と言ってくれました。

信級全体が見渡せる場所を探していたので、私はとても嬉しくなりました。

シェーン

食事を終え、居合わせた人たちとおしゃべりを堪能して店を出ると、

すらっとした素敵な女性が食堂の前を歩いていました。

その光景はなんだかファンタジーな映画でもみているようでした。

カナタの加藤さんの奥さんのメリーさんでした。

カナタという洋服をつくっている会社で、

かたつむり食堂から見えるところにあります。

初めてお話しして、まじかでメリーさんを見ました。

とても美しい人でした。

第一日目。

撮影はしなかったけど、

食堂でいろんな人と会えて、たくさん話をすることができて

とても良かったなあと思いました。

この日のメモには、

軽い三脚も持ってくれば良かった。

とにかく焦らず丁寧にやっていこうと書いていました。

兎にも角にも、撮影は始まりました。

布団に入った途端に眠りに入っていきました。

信級日記 vol.1

令和元年5月20日

撮影へ出発。

10日間ほどの予定。

久しぶりの撮影。

機材・持ち物のチェック。

何度も何度もする。

不安とワクワクする気持ちの入り混じる道中。

新しくしたキャメラ。

試し撮りを重ねてきたものの、

本番で思うように扱えるか・・・。

車で苫小牧東港まで走り、夜7時半出航。

20時間フェリーに乗って、翌日の午後3時半、新潟港に到着。

新潟から4時間半車を走らせ、ようやく信級にたどり着く。

信級までの長い道のり。

徐々に気持ちをつくっていく。

思いの外いい時間になった。

新作映画、撮り始めます

「風のたより」の上映で出会った長野県・信級(のぶしな)を舞台に映画を撮ることが決まりました。

信級で暮らす人たちを1年にわたって撮影する予定です。

撮影の一坪悠介さん、録音・整音の柳屋文彦さんもご協力いただけることになりました。

ただいま、諸々準備中です。

新作映画製作協力のお願いをご縁のあった方々に郵送しています。

賛同してくださる方、ぜひ製作協力をお願いいたします。

新作映画「信級(のぶしな)」(仮題)の製作協力のお願い

    

平成最後の年が終わり、新しい年になりました。お元気でお過ごしでしょうか。

映画「風のたより」が完成してから、北海道、東京、神奈川、千葉、群馬、福島、栃木、滋賀、長野、山形、ベルギー

様々な場所で上映をしていただきました。

上映の後は、お酒を飲み、その土地の食べ物を味わいながら、しばし至福の時を過ごしました。

見てくださった方と直接お話をする中で、「風のたより」を自分自身と重ね合わせ、

深く受け取ってくれていることに感動することも多々ありました。

2017年、私が一つの目標にしていた山形国際ドキュメンタリー映画祭に、

幸運にも「風のたより」が上映されることになりました。

1997年からこの映画祭に参加していましたが、今回初めて製作者として参加できたことは、私にとってとても大きなことでした。

今までの集大成として、私は上映にのぞみました。

出演してくれた山田農場のあゆみさん、ラムヤートの今野満寿喜さんをはじめとする面々、

そしてこの映画を上映してくれた人たち、観てくれた人たちが全国から山形に駆けつけてくれました。

みんなで映画祭に参加できたこと、これが何より嬉しく、私はテンションが上がりっぱなしでした。

上映だけでなく、みんなでチームを組んで映画館の中に出店をつくり、

山田農場のヤギチーズとワイン、ラムヤートのパンの販売をしました。

お客さんは大喜び。最高に贅沢な映画の上映になりました。

 

そしてこの山形の地で、意外な気持ちが湧き上がってきました。

今は何を撮りたいかはわからないけれど、「また映画をつくりたい!」と。これには本当に自分でも驚きました。

それからしばらくして、次に撮りたいものが見えてきました。

長野県にある信級(のぶしな)という集落です。

「風のたより」を上映してくれたところです。

この先に本当に集落があるの?というような山間のくねくねした道を進んでいくと、

パッとひらけて、なんだか懐かしい感じのする風景が目に飛び込んできます。そこが信級です。

山の中腹には、立派な木造の信級小学校が建っています。

一目見て、惚れてしまうような佇まいです。

今は廃校になっていますが、信級で育った人たちがみんな通った小学校です。

この、みんなが大切に思っている信級小学校が上映会場でした。

主催してくれたのは、信級に移り住み、田んぼと炭焼きをしている植野翔さんという青年でした。

彼は集落の人たちに上映会のことを丁寧に説明して歩きました。

その甲斐あって、当日は満員御礼。信級の重鎮の方たちもたくさん参加してくださいました。

そして映画を最後まで見て、しっかりと受け取ってくださり、私はとても感動しました。

「信級の潮目が変わった!」

これは、植野さんの炭焼きの師匠・関口さんの上映後の言葉です。

その他にも個性あふれる感想をたくさんいただき、感激の上映会でした。

小学校にこれだけ人が集まったのは何年振りだろうか、と口々に言っているみんなの顔は、なんとも嬉しそうでした。

そしてこの夜、オープンしたばかりのかたつむり食堂で打ち上げをしました。

この時の植野さんの心底嬉しそうな顔。今も忘れられません。

信級小学校、魅力的な人たち、そして美しい風景と共に、上映会が私の胸に刻み込まれました。

そしてその後も、なんだか時々信級を思い出していました。

以前、信級には1000人以上の人々が、田んぼや炭焼きをして暮らしていたそうです。

現在は100人ほどになってしまいましたが、

植野さんのように、信級で暮らしをつくって生きていきたいという人が移り住んでくるようになりました。

信級で生まれ育った人たちと、新しく暮らし始めた若い人たちとが、刺激しあったり調和したりしながら、

これからの信級をつくっていこうとしている姿に、私はとても魅力を感じました。

当然のことながら、信級にも刻々と時が流れ、日々人々が暮らす状況も変わっていきます。

それでも守っていきたいものを、信級の人たちは持っているのではないか、と私は感じました。

それはきっと、ずっとずっと前の祖先の人たちが、守り大切にしてきたことなのかもしれないと思うようになりました。

先人の方たちが脈々と次の世代に手渡してきて、今、植野さんたちがそれを受け取ったのかもしれません。

そんなことを思ううちに、撮影を通して信級の人たちと向き合い、植野さんたちが受け取ったものを探していきたいと思うようになりました。

なぜ撮りたいのか、何を表現したいのか、いつも自問自答し続けているのですが、

ファインダー越しに被写体の人と向き合っている時、「ああ、いいなあ・・・」と思う瞬間があります。

こういうものをみんなと共有したいと思ってしまいます。

今まで私は映画と共に、そこに暮らす人たちや土地と出会ってきました。

そうやって歩いているうちに、自分が生まれ育った日本の素晴らしさ・美しさを身にしみて感じるようになりました。

言葉にするとやはり陳腐になってしまいますが、面白い映画をつくりたいと思っています。

そして、信級の人たちと一緒に花を咲かせたいです。

春から撮影を始め、一年くらいかけて撮影をすることを考えています。

今回も自主製作で、賛同をいただける方々から製作資金を募って映画づくりを進めてまいります。

私にとって3作目の映画になります。みなさんと共に、いい映画をつくっていきたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

ご賛同いただけましたら、製作協力金をぜひよろしくお願いいたします。振込用紙を同封いたしました。

一口 5000円 (何口でも)

製作協力いただいた方のお名前は、完成した映画のエンドロールに掲載いたします。

希望されない方は、お手数ですがその旨お知らせ下さい。

風の映画舎 田代陽子

メール 3y@soramori.net  

風の映画舎 HP    http://www.kaze-film.net/

久しぶりに

地元の清水町で、「空想の森」の上映をやっていただきました。

お客さんの笑いがたくさんあったいい上映会でした。

この撮影からもう15年。

感慨深く私も一緒に観ました。

いい雪が降っています。