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撮影報告 その115 大間・山本家 三日目

2012年5月6日(日)。

今日も曇り。

私は昨日と同じように起きてからすぐにキャメラを持って、山本さん夫婦といっしょに過ごしながら撮影。

 

お茶を飲みながら、朱美さんと話をする。

山本家は、大間で魚の獲れる量が減ってくる初夏から冬まで、岩手県の久慈に拠点を移して魚を獲るという生活を続けている。

「大間で魚が獲れたら行かなくてもいいんだけど。」と朱美さん。

 

漁の日、山本さんは朝4時過ぎから支度をはじめ、5時には港を出る。

帰って来るのは夕方6時か7時くらいだ。

18歳で山本さんと結婚し、以来ずっと朱美さんはご飯をつくり、掃除をし、子供を育て、家を守ってきた。

「子どもたちが大きくなったと思ったら、息つく暇もなく今度は孫の世話だもの。」と朱美さんは笑う。

 

船にいっしょに乗らせてもらった長男の卓也さんは、家族3人で名古屋に行き、元気に働いているそうだ。

 

「それにしても、山本家はみんなよく話をしますね。」と私が言うと、

「そう。うちはみんな何でもよくしゃべるの。」と朱美さんは言った。

 

庭に出てみた。

今日もくもり空で肌寒い感じだ。

家の前のこいのぼりが勢いよく泳いでいる。

大間は風が強い日が多い。

漁で使う糸に山本さんがこいのぼりをつけたそうだ。

 

少し花が咲いていた。

家の脇に小さな畑があり、ネギやキャベツが植えられていた。

 

私が撮影していると朱美さんも庭に出てきた。

今年はカラスにキャベツをやられたそうだ。

「この倍くらいの大きさがあればもっと野菜がつくれるのだけどね。」と畑からネギをとった。

 

昼ごはんは暖かいそうめん。

畑のネギが入っていた。

そして自家製の梅干しが何ともおいしかった。

これは、山本さんたちが半年過ごす岩手県・久慈の人から教えてもらった方法でつくった梅干しとのこと。

絶品だ。

 

午後、ユキさんと子どもたちがやってきた。

山本さんは小屋の中でトウキくんのパンクした自転車の修理にかかった。

ユノちゃんはその周りでほうきと塵取りを持って一生懸命お掃除をしていた。

 

パンクを修理してもらったトウキくんは、元気よく自転車をこいで遊びに行った。

その後ろ姿を見つめる山本さんの目が印象的だった。

 

そして私は家の中に入って、ユキさんのインタビューをさせてもらう。

大間原発のことを撮影するようになってから、私は大間の漁師の人がどんな暮らしをしていて、原発についてどう思っているのかを知りたくなった。

そして特に若い人が原発のことをどのように考えているのだろうと気になっていた。

 

ユキさんも10代で同級生のカズキさんと結婚し、3人のお母さん。

看護士として大間の町の病院で働いている。

チャキチャキした肝っ玉母さんという感じだ。

 

ユキさんは今回の福島第一原発の事故を目の当たりにして、原発の問題を初めて自分のこととして捉えるようになったという。

子育て中の今、放射能のことがとても気になるとユキさんは言った。

[…]

撮影報告 その114 大間・山本家 二日目

2012年5月5日(土)。

今日は北海道の泊原発が止まり、日本の原発が全て止まった記念すべき日。

ゆっくり眠らせていただいた。

 

私が使わせてもらった部屋に感謝状があった。

山本さんが仲間の漁師を助けた時のものだ。

あと5分遅かったらその人の命は危なかったそうだ。

 

 

朝起きて、キャメラを持って廊下をへだてた居間へ。

山本さん、朱美さんはもうとっくに起きていた。

今日も曇っていて肌寒いような天気だ。

 

朱美さんは神棚に水をあげたり、パンパンと拝んだり、朝のするべきことを着々とやっていた。

山本さんは今日も漁は休みでゆっくりしていた。

私が使わせてもらっている部屋にも神棚があり、それは漁の神様を祭っている。

朱美さんは2か所の神棚にお水と朝のご挨拶。

 

朝食後、居間で山本夫婦とおしゃべりをしながら撮影。

午前中、奥本さんが山で採ってきたわさびを持ってやってきた。

そして晩に奥本さんと町に飲みにいく約束をしていたのでその話をしていたら、

山本さんが、「ウチで飲めばいいべ。」と言ってくれたので、今晩は山本家で飲むことになった。

山本さんが飲めないので、飲んべの私と奥本さんは町の居酒屋へ行って飲むかと話していたのだ。

「晩に奥本家のわさびのおひたしも持ってくるから。」と言って奥本さんは帰っていった。

 

朱美さんは晩のおかずづくりを始めた。

見慣れないものだったので聞いてみると、マグロの胃袋とのこと。

朱美さんは、マグロの身よりも胃袋の方が好きだという。

どんな味なのか晩が楽しみだ。

それから、奥本さんが採ってきたわさびをおひたしに。

 

山本さんと朱美さんはなんでもよく話をする。

「今まで食べた「(朱美さんの料理)中で、茶碗蒸しが99点だった。あれはいい味だったなあ。卵がもう少し柔らかければ100点だったなあ。」と山本さん。

「ほんの少し早く鍋から出していれば、最高だったんだけどねえ。」と悔しそうな朱美さん。

「でも味はなんとも言えずよかったなあ。」と山本さん。

 

こうやって漁の休みの日は過ごしているんだろうなあ。

それにしても山本さんは実に穏やかに話をする。

山本さんと話していると私も穏やかな気持ちになる。

「いやー、昔は違ったんだ。母ちゃんに聞いたらいい。」と山本さんは言った。

 

「今も頑固だけど、昔はもっとすごかったー。」と朱美さん。

朱美さんの明るさと優しさで山本さんは癒されているのだなあと感じた。

そして朱美さんは山本さんの家族を守る強い意志と優しさに惚れているんだろうなあ。

ポッキー

ポッキーは時々外に出たいと言う。

朱美さんが窓を開けると、ポッキーは30センチほどの段差をエイヤと跳ねて庭へ出る。

そしておしっこをして、しばらく外の空気を吸って満足すると、今度は自分でドアを開けて部屋に戻ってくる。

そして朱美さんがウエットティッシュで足とオチンチンをふいてあげる。

ポッキーはブルブルっと頭を振って、ゆっくり部屋を一周してから、ストーブの脇の自分の寝床にうず

くまる。

[…]

撮影報告 その113 大間・山本家 初日

2012年5月4日(金)。

昨日から風が強く、大間行のフェリーが予定通り出航するか気をもんでいた。

事実、昨日の午後の便は欠航だった。

この天候と風で欠航になると思うからもう一日函館にいたらいいのに、と野村さんはしきりに言う。

船着き場に電話して確認すると予定通り出航するとのこと。

私は野村家を後にしてフェリー乗り場へ向かった。

 

9:30。船は無事函館港を出港。

昨日の午後の便が欠航になったため、奥本さんもこの船に乗っていた。

今回、奥本さんの話も撮影させてもらうことになっている。

昨日のことなどひとしきり話してから、私は婦人室で爆睡。

 

11:30。大間港に着く。

山本さんの家に直行した。

ゴールデンウィークは漁も休みとのことで山本さんも家にいた。

妻の朱美さん、長女のシノブさん、山本家のみなさんと再会。

初めてお会いしたのがは去年の11月末。

一坪君と漁の撮影をした時だ。

あれから半年になる。

 

今日一日は撮影をしないで、山本家のみんなと色んな話をしよう、そして明日から帰る日までの4日間、しっかり撮影しようと私は考えていた。

 

早速居間でお茶をいただきながら話をした。

その内お昼になり、朱美さんがオムレツをつくってくれた。

明美さんはホント、料理が上手だ。

山本家滞在中、朝昼晩と毎日おいしい食事をいただいた。

 

山本家はいつも整理整頓されている。

モノはあるべき場所にしまわれているので、居間はすっきりしてスペースが広い。

これは朱美さんのきれい好きによるところが大きい。

 

玄関を入って左の二間続きの部屋を使わせてもらった。

機材を置く部屋と寝る部屋に分けられてすこぶるいい。

 

そうこうしているうちに、山本さんの次女・ユキさん一家がやってきて一気ににぎやかになった。

 

ユキさんはハルトクン、トウキクン、ユノチャン、三人のお母さんだ。

上の二人の男の子は小学生、下の女の子は保育所に行っている。

カズキさんとユキさん

ダンナさんのカズキさんは、船の乗りこをしているが、明日から2週間の出稼ぎに出るそうだ。

乗りことは、自分の船を持っていないので人の船に乗って漁をする漁師のこと。

ユキさんは大間町に一つだけある病院で看護師をしている。

子どもたちは、それぞれ学校や保育所が終わるとほぼ毎日山本家にやってくる。

そしてユキさんも仕事が終わるとやってきて、夕ご飯をみんなでいっしょに食べ、お風呂に入ってから近所の自宅へ帰るという。

 

シノブさんが子どもたちの面倒をよくみているので、私は産みの母、シノは育ての母なんだとユキさんは言った。

 

5月 26th, 2012 | Category: 原発, 新作撮影報告 New ! | One comment

撮影報告 その112 市民法廷 大間原発

2012年5月2日(水)。

5月4日に道南がれき問題を考える会主催で木下黄太さんの講演会が開催される。

晩に市内で木下さんを迎えて交流会があるとのことで、野村さんと一緒に参加。

 

 

 

函館市民会館小ホール

 

2012年5月3日(木)。

今日は市民法廷大間原発の撮影。

お昼前、野村さんと函館市民会館に向かう。

野村さんは受付で著作『原発に反対しながら研究をつづける 小出裕章さんのおはなし』の販売をする。

三脚を立てキャメラをセッティングしているうちに、どんどんお客さんが入ってきた。

第5回の大間原発の裁判で意見陳述をした小松さんと久しぶりに顔を合わせしばし話をする。

彼女は今日の市民法廷でも意見陳述をする。

大間から奥本さんも来ていた。彼も意見陳述をする。

会場後方はチェルノブイリ展

 

たくさんのお客さんが集まってきたので、私は右手の前の方にキャメラを移動した。

中野弁護士。

若手の中野弁護士がトップバッター。

私が前にインタビューさせてもらった人だ。

自分がなぜこの裁判にかかわろうと思ったのか、自己紹介から始まった。

 

大間原発の危険性について、中野弁護士は力強く、そしてあんちょこを一切見ないで、観客に向かって堂々と話をした。

最後に、命より大事なものはないと強く訴えていた。

心を揺さぶる見事なプレゼンだった。

 

兼平弁護士。

 

他2人の弁護士のプレゼンも本当に素晴らしかった。

みんなどれほど勉強して準備をしてきたことだろう。

意見陳述をする小松さん。

意見陳述も本番と同じ原稿を読み上げた。

 

意見陳述をする奥本さん。

そして、大間で原発に反対し土地を売らなかった在りし日の熊谷あさ子さんの映像が流れた。

 

[…]

撮影報告 その111 函館・川汲へ

2012年4月30日(月)。

函館へ車を走らせる。

何度目の函館だろう。

今年の桜も函館で見ることになる。

 

お昼は美沢パーキングエリアで持ってきたお弁当を食べる。

塩をきかせた玄米おにぎりにのりをまいて食べた。

これほんとおいしい。

ゆで卵の殻をむいて塩をまぶしたものもめちゃおいしかった。

これに糠漬けでもあったら最高。

 

今回の撮影は道南・川汲のこんぶの漁師さんのお話をうかがうこと、

そして青森県大間の漁師さん・山本さん一家の暮らしの撮影をメインに据えた。

それから憲法記念日には、函館で大間裁判の撮影、そしてその後、春の山田農場、ラムヤートの撮影という予定。

道南・川汲の漁師さんは、大阪のこんぶ土居の4代目・純一さんから紹介いただいた。

今回も盛りだくさんの撮影になりそうだ。

親方宅にて。ペコちゃんも元気だった。

 

今日の宿泊先は七飯町のこなひき小屋の親方の家。

夕方に到着。

親方は夕寝をしていた。

私を見るなり、「お前、太ったな。」と言った。

 

おかみさんが帰ってくるまでひとしきり親方と話をする。

この日、親方はめずらしく原発のことを熱く語った。

個と個の関係で手におえないことはやらない、

いかに個と個の関係を築いていくか、

いかに自分の言動・行動に意志と責任を持つか。

こんなようなことを親方が話した。

これらの言葉がとても印象に残った。

 

おかみさんが帰ってきて夕食の支度を手伝いながらまたひとしきり話す。

そして三人で夕食を囲んだ。

 

2012年5月1日(火)。

9:30。親方の家を後にして山田農場へ向かう。

あゆみちゃんから寄って欲しいと昨日電話があった。

こどもたちの未来を守るために、できることをみんなで考えたいと、あゆみちゃんは最近「大沼・こども未来舎」を立ち上げた。

5月24日に大沼で講師に岩内の齊藤武一さんを招き、「震災がれきの受け入れを考える学習会」を開く。

そのチラシができたので函館の野村さんに渡してほしいとのことだった。

 

山田農場のボー先生。

山田農場は清らかな空気に包まれていた。

世の中はゴールデンウィーク。

 

チーズ工房の前にて。奥があゆみちゃん。

山田農場にもお客さんが切れ目なくやってくる。

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