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撮影報告 撮影部:一坪悠介

「多くはいらない。少なく小さなものを膨らませて、生きる」

2013年3月末、田代さんに連れられて冬の雪が残る洞爺を訪ねました。

ラムヤートの今野さんご一家を撮影させて頂くためでした。

今野満寿喜さんご一家とお会いして、その日から日常風景を撮影させて頂きました。

ラムヤートはまだオープン前でその準備をゆっくりと始めたところのようでした。

僕たちの狙いはその準備していく風景と日常、オープン直前の家族の思い、そして開店。

僕は4月から別の撮影が始まるので開店までは残れませんでしたが、それがとても心残りでした。

満寿喜さんの空間作り、美環さんとゆうらくんの日常、ごんちゃん(友田くん)のパン作り、

店の佇まい、壁の色、丸くなった猫たち、訪れる友人たちと囲む食卓、聞こえてくる洞爺湖の波の音。

皆がこの地を愛し、この生活を愛で、それぞれの思いで今、ここで生きているのだと感じました。

自分と自分の家族と、その周りにいる人たち皆が幸せになる道を行くこと。

最終的な「幸せ」は利便性を追求した先にはないのだとこの集落に住む人々は知っているようです。

いや、そう思う新しい世代の人々がこの洞爺の地に集まってきているのでしょう。

なるべく安く、なるべく便利に生活をしたいと思うのは人の業。

その欲求を満たすために作られた手段が薄利多売、大量生産大量消費の経済です。

数の論理、多数決の強み、自由民主主義を盾にした強者の論理です。

美しい技を持つ職人や地域に根付いて生きてきた店は企業努力が足らなかったのだと一笑に付されてしまいます。

そういう人たちを顧みない、「自分さえ良ければ」という生産、

販売、消費者の業が合わさり今の日本経済を形作ってきたのだと思います。

その恩恵を享受する一方、そうして生まれた歪みや偏り、

「不幸せ」といってもよいですが、そうしたものは巡り巡って己に跳ね返ってきます。

経済学者でなくとも少し考えれば分かることです。

今の日本の姿を見ればそれは明らかです。

3.11の震災、それに続く原発事故で言葉を失いました。

撮影報告 その182 ラムヤート6年目のスタート vol.7

2013年4月2日。

7:00前 目が覚める。

雨音が聞こえる。

雨音を撮ろうと思い、隣のマスキくんのパソコン部屋へ。

みんなを起こさないように静かに。

 

 

みんなで朝食。

しみじみといい朝食だった。

 

まったりしていたら、 用事がってやってきた近所の友人とゴンちゃんが勝手口で話をしていた。

なんともいい感じなのだ。

ああ、撮りたいなあ、キャメラ持ってこようかな。

などと思ってしまう。

マスキくんとミワさんの何気ない会話も、ああ、撮りたいなあと思ってしまう。

 

そして、いよいよ別れの時。

握手してみんなと別れた。

 

帰る道中、今回の撮影を思い返していた。

それぞれの持つ世界が幾重にもシンクロした。

なんだか頭の中が感動でしびれていた。

 

これを誰かに話したくて、そのまま新得の宮下さんの家に寄った。

「今朝、陽子ちゃんに電話かけたところだったんよ。」

と文代さん。

宮下さんも、

「陽子どうしているかなあって、朝思ってたんや。」

おおー、以心伝心。

 

そして私はしゃべった。

途中から文代さんは晩ごはんの支度で台所へ。

居間に来る度に、

「今何話してたの?」

と聞く。

「ご飯支度していると、いつも話が聞こえなくて今までどんだけ聞き逃していることか。後で宮下さんに聞いても、一言で終わるし、ホント、やんなっちゃうわ。」

台所が居間の隣の隣なので、話が聞こえないのだ。

台所の隣の部屋で食べたらいいのだが、トイレが近くにあるのでそれが文代さんは嫌なのだ。

だから、私は文代さんが聞きたいだろう話は、文代さんが来てからすることにしている。

宮下さんだけに話したことは、結局もう一回話さなくてはいけなくなるから。

逆に、文代さんに話せは事細かに宮下さんに話してくれる。

 

ラムヤートでは、台所のすぐ後ろにテーブルがあるから、ミワさんは作りながら食べながらみんなと話ができる。

そういえば、最後の晩御飯でイモとセロリの天ぷらを揚げながらミワさんが言ってたっけ。

「料理を全部つくってからテーブルにつくんじゃなくて、できたものから食べてもらうようにしたら、熱いものは熱いうちに食べてもらえていいよね。」

と。

文代さん特製のタコライスをご馳走になり、久しぶりに文代さんと宮下さんとゆっくり話した。

 

しばらく余韻が続きそうだ。

[…]

撮影報告 その181 ラムヤート6年目のスタート vol.6

2013年4月1日。

いい天気。

 

いつものように朝食をいただく。

 

店仕様の服に着替えるマスキくん。

「ミワさーん、シャツ出してもおかしくないかな?」

と工場の中にいたミワさんにチェックしてもらう。

 

スタッフのあゆみちゃんもやってきて工場に入る。

ゴンちゃんとモノの置き場や動線の確認。

トレーにのったゴンちゃんのパンが小さな窓から出てきた。

ミワさんかそれを受け取る。

「ゴンちゃんのパンが初めて棚に並ぶー!」

とミワさん。

記念すべき一つ目のパンを大事そうに棚に置く。

 

あゆみちゃん、マスキくん、ゴンちゃんもやってきて、パンが並んだところをしばし見つめていた。

パンの前で記念撮影。

 

朝の朝礼。

一人ひとり、想いを話す。

去年一年、パンがない中、おにぎり屋とランチプレートでなんとかしのいできた。

ゴンちゃんはひたすらパンと向き合う日々。

そして店に出せるレベルまでになった。

コツコツつくってきた窯もなんとかできた。

 

あゆみちゃんもマスキくんもかなりウルウルきていたよう。

私もみんなの顔を見ていてジンときながら撮影を続けた。

一番初めのお客さんがいつくるか、みんなでワクワクしながら待っていた。

車が駐車場に止まった。

出てきた人が店に向かって歩いてくる。

「来るよ、来るよ!お客さん!」

とみんなスタンバイ。

 

月曜平日にも関わらず、この日は20組以上のお客さんがやってきた。

コハムさん、ユノちゃんのおかあさん、近所の人たちもやってきた。

フーさんも嬉しそうにちょこちょこやってきた。

みんな心待ちにしていたのだなあ。

 

パンを買っていくお客さんを見るゴンちゃんの顔。

久しぶりの店の営業。

みんな楽しんでいた。

そしてどんどんエンジンがかかっているようだった。

ランチは工場でみんなでいただく。

パンとチーズ。

 

ラムヤートはここ洞爺で、暮らしと仕事を味わいながら、これからもゆっくりと目指すところへ歩いてゆくんだろうな。

 

3時。

カフェスペースでお茶をしながらスタッフミーティング。

[…]

撮影報告 その180 ラムヤート6年目のスタート vol.5

2013年3月31日。

8:30 起床。

 

工場に行ってゴンちゃんの仕事を見させてもらう。

なんか工場に行きたくなる私。

ゴンちゃんはいつでも快く中に入れてくれる。

窯もじっくりと見た。

一坪君が起きてきて遅い朝食をいただく。

 

お昼は一坪君と歩いて素敵なカフェ・コハムさんへ。

コハムさんのご夫妻も昨日のゆみこ祭りに参加していた。

「昨日は酔っぱらって話し過ぎてすいませんでした。」

とテーブルに水を置きながら夫の悟さん。

「確かにたくさん話をしたけど、とっても楽しかったですよ。」

と私。

ちと飲み過ぎたかなと思う翌日の気持ちは痛いほどよくわかる。

 

ランチをゆっくりいただきながら、一坪くんと色んな話をした。

ゆみこ祭りのこと、連フンのこと、ラムヤートのこと、どんな映画にしたいか、これからの編集、仕上げのことなど。

一坪君の顔を見ながら、来た時よりずいぶんリラックスして柔和な顔になったなあと思う。

 

ラムヤートに帰り、一坪君は帰る支度。

みんなに挨拶をして名残惜しそうに車に乗った。

左からゴンちゃん、一坪君、マスキくん、ミワさん

ゴンちゃんは店の前で見えなくなるまで手を振っていた。

洞爺駅で一坪君と別れた。

 

私はこれから撮影だ!と気を引き締め、ラムヤートに戻った。

 

マスキくんは地域の寄り合いに出かけていた。

私は早速ゴンちゃんの撮影をした。

 

夕食。

久しぶりに少ない人数。

「マスキくんが、えげつない空間とみんなが心地いい空間とどっちがいい?って聞いてきたんです。昔の私だったら心地いい空間と言っていたけど、えげつなくていいんじゃないって言ったんです。」

とミワさん。

どうやら今シーズンはマスキ色を前面に打ち出すらしい。

 

マスキくん寄合から帰って来て来た。

「寄合に集まった地域のオジサンたちに、柔らかいパンもつくってくれって言われちゃったよ。」

と苦笑い。

 

ミワさんのリクエストでユミコ祭りで撮ったものを見ることに。

連フンの場面では大笑い。

 

8時過ぎ。

マスキくんの空間づくりが始まった。

明日オープンなのだ。

今シーズンのラムヤートの空間をどんなふうにつくっていくのか。

[…]

撮影報告 その179 ラムヤート6年目のスタート  vol.4

2013年3月30日。

8:00 起床。

窓を開けると、外は雪化粧。

天気もいい。

まだ寝ていた一坪君を起こして、昨日見つけた撮影ポイントへ行って撮影。

 

帰ってきて朝食をいただく。

 

マスキくんが二階の新しくつくったパソコン部屋で仕事をしていた。

私が寝ている部屋の小さなすりガラスを開けて中をのぞいてみた。

自分の好きなものを置いているのだろう、いたるところに小ささモノが置かれていた。

壁には色んな絵が描かれていて楽しい。

前に私が撮影した時につくっていた小屋の壁に、イベントの参加者に絵をかいてもらったものだそうだ。

キャメラが空いていたので、急いで少しだけ撮影した。

 

 

「友達になりたいと思う同世代の男に久しぶりに会いました。」

と一坪君が私に言った。

ゴンちゃんの仕事を撮影しながら話をしているうちに、一坪君はすっかりゴンちゃんが大好きになったようだ。

そのせいか、私の予想より一坪君はだいぶテープをまわしていた。

今晩はゆみこ祭りもあるので、残りのテープの配分などを二人で相談。

一坪君が31日に帰った後は、オープン前日とオープンの日を私が撮影するので、テープの残量が気にかかっていた。

「尺が決められた中で撮影するのは、良く考えて撮影できていいことだから。ゆみこ祭りは10分しか回さないから大丈夫です!」

と妙に自信たっぷりに一坪君が言うので、テープを買いに行くのをやめた。

白黒のノラネコはチョコちゃんを探してか、今日も家の周りを歩いている。

近所のエッケさんが、ラムヤートの周りの氷割りや雪かきをしている。

「いつもコーヒーとパンでやってくれるんだ。」

とマスキくんが言った。

マスキくんには洞爺の愛すべき人々が何人もいる。

エッケさんはその一人。

エッケさんを見ていると、マスキくんのその思いが私にも伝わってくる。

ゆうらは、エッケさんの子どものタンタンと雪山でそり遊び。

もうこれだけで、なんて素敵な日なんだろう♪と思ってしまう私。

この何でもない日常のキラキラ感を私は映画で伝えることができるだろうか?

 

この日のランチはエッケさん、タンタンもいっしょににぎやかにいただく。

 

夕方、みんなで私の車に乗り、ゆみこ祭りの会場へ向かう。

ミワさんは準備があるので早めに家を出ていた。

いこいの湯の近くのログハウス。

洞爺湖の眺めがいい。

 

中に入ると、大勢の子どもが走り回って遊んでいた。

ミワサンは準備で動き回っている。

マスキくんは会場の飾りつけをはじめた。

[…]