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旅する映画 その15 あおもり映画祭

実行委員長の川嶋大史さん

2009年6月21日。 今日が本番というのに、昨夜調子に乗って飲み過ぎたため二日酔い気味。

朝、水がやたらにおいしかった。 9:00。畠山さんが迎えに。

彼も私同様、少々飲み過ぎたようだ。

会場の県立美術館へ。

三内丸山遺跡のすぐ隣の、大きな真っ白なモダンな建物が美術館だ。

ここで実行委員長の川嶋さんと初めて顔を合わせた。

奥さんも受付で準備をしていた。

アンケートを事務所で印刷してもらい、会場に入り、画と音のチェックをさせてもらった。

300人くらい入るなかなか立派なシアターだ。

画も音もばっちりだ。

川嶋さんの奥さん

11:00。お客さんも会場に入り、川嶋さんが舞台に立ち、いよ映画祭が始まった。

千村監督と小林でび監督の短編映画を観た。

なかな か面白かった。

そして最後に昨日と今日の朝に三内丸山遺跡で撮影した3分ほどの映像を上映した。

三内丸山遺跡を訪れたサラリーマンが、縄文人に変身するという物語になっていた。

編集スタッフを東京から呼んで徹夜で仕上げていたそうだ。すごい。

お昼は美術館のレストランで、千村組と私と畠山さんでいっしょに食べた。

私は編集スタッフの人にパソコンの編集ソフトのことを聞いたりした。

干村組は自分たちの上映が終わってほっとして高揚していた。

私は映画をいっしょにつくる仲間がいていいなあと思った。

私は昨日のお酒も抜けてきたが、自分の上映がせまってきて緊張してきた。 14:00。空想の森の上映が始まった。

お客さんは50人弱ほど。とても静かに観ていたので少し不安になった。

上映後、川嶋さんとトーク。

無事終わりホッとする。

17:00。小さなビデオキャメラと三脚を渡され、私は畠山さんと、三内丸山遺跡へ撮影に。

この場所で縄文時代の人たちはどんな風景を見て、どんな暮らしをしていたのだろうということに思いを馳せた。

小一時間ほど撮影をした。

久しぶりの撮影なのと使い慣れないキャメラだったのでどっと疲れた。

しかし撮ったはいいが、これを編集する余裕があるのかが問題だ。

懇親会に合流した。

千村組6人と映画祭スタッフで始まっていた。

千村さんとでびさんは下戸だったのだ。

が、見かけはものすごく飲めそうな顔をしている。

私は昨日大酒を飲んでいたことが知れ渡っていて、みんなからやたらに酒を勧められた。

しかしさすがにこの日はそれほど飲めなかった。

色んな人たちと話した。

映画祭を開催する環境が厳しくなる中、なんとか映画祭を続けていこうというスタッフたちの思いに、私も勇気づけられた。

二次会は中華料理店。

円卓を囲み、更にみんなが打ち解けて話がはずんだ。

[…]

旅する映画 その14 あおもり映画祭へ

2009年6月20日。 帯広は肌寒い。

モモヒキもはいてくればよかったかなあと後悔するほど。

しかし、向かうのはここより南の青森だし、まっ、いっか。 JRの車中は、ほとんど寝ていた。

16:00前、青森駅に到着。

こんなに小さな駅だったかなあ。

改札を出ると、県庁職員の畠山秀樹さんが出迎えてくれた。

今年のあおもり映画祭の前半は、若手の監督がつくる短編映画と、なぜか尺の長いドキュメンタリー「空想の森」が上映されることになった。

事前のやりとりの中で、実行委員長の川嶋さんは、「空想の森」に縄文に通じるものを感じた、と私に言った。

川嶋さんは縄文を研究したり発信したりとライフワークにしている人だった。

この映画祭の会場は三内丸山遺跡のすぐ横にある青森県立美術館のシアターだ。

そして川嶋さんはこんなことを私に言った。

「上映後、気が向いたら三内丸山遺跡を好きなようにビデオで撮影して欲しい。」と。

青森県は三内丸山遺跡を世界遺産に。というアピールを県を挙げて取り組んでいる。

そんな中、若い映像作家たちが縄文の遺跡をどう感じるのか、映像で撮り、それが少しでも世界遺産へのアピールになれば、という考えらしい。

7年ほど前、私は友人に誘われ、定期的に集まっては縄文時代の暮らしを調べる会に参加していた。

そんな頃、その仲間たちと三内丸山遺跡を訪れ、縄文時代の豊かさにますます魅了されて帰ってきた。

遺跡の資料館で見た服や装飾品、食べ物を参考に衣装をつくり、縄文巻き巻きという食べ物をつくって、地元の豊年満作祭で縄文カフェを出店したりもした。そんな訳で、今回のあおもり映画祭はとても楽しみだった。 県庁の畠山さんによると、今日はこれから短編映画の監督・俳優も東京からやってくるとのこと。

監督たちは、その足で早速三内丸山遺跡を撮影に行くとのことだから一緒に行かないかと。

私も同行することにした。 宿にチェックインし、小一時間ほど休む。

17:00。

再び畠山さんが迎えにきてくれて、千村利光監督、小林でび監督、女優の伊藤久美子さんとそのマネージャーの男性と駅で合流した。

千村さんとでびさんは、あおもり映画祭に何度か作品が上映され、すっかり青森のファンになったそうだ。

機材も自前で持ってくる熱の入れようで、明日の朝も撮影し、明日の上映の後、編集したものをお客さんに見せようと計画していた。

挨拶もそこそこに、車2台に分乗し三内丸山遺跡に向かった。 遺跡入り口には巨大な建物が建っていた。

エントランスと資料館だ。そこを通り抜け、早速遺跡に向かった。

でびさんが、おもむろに用意してきた衣装のスーツに着替えだした。

千村さんが小道具などを取り出している。

ストーリーがあって、それに沿って撮影をするらしい。

千村利光監督 小林でび監督

私、伊藤さん、彼女のマネージャーは撮影を眺めたり、プラプラと遺跡を見て回ったりした。

前に来た時も感じたのだが、なんか気分のいい場所だ。

巨大な6本柱は実に画になる。

下から見上げると迫力がある。

住居跡の中にも入ってみる。大きな空間だ。

私たちはプラプラしながら少し話しをした。

伊藤久美子さんは、千村さんやでびさんの作品に出演している女優さんということがわかった。

みんなから「いとくみ」と呼ばれていた。 少し離れたところで、今度は縄文時代の服を着たでびさんが裸足で走っていた。

千村さんはそれを前や横、後ろから撮影をしている。

楽しそうだ。

8月 21st, 2009 | Category: 旅する映画 (上映日記) | Leave a comment

旅する映画 その13 安房へ

瀧口輝三朗(みきお)さん 2009年4月12日。 千葉県の房総半島、館山を目指す。 ただ今「空想の森」の自主上映会を計画している、 安房地人協会(瀧口さんたちが何か一緒にやるときの名前)の瀧口輝三朗さんに会いにゆく。

10:00。川崎駅からバスで木更津駅へ。 1時間ほどバスに揺られる。 そこから電車で館山駅へ。 初めて見る外房の海は春の穏やかな陽を浴びキラキラしている。 車窓は、だんだんのんびりした風景になってきた。 12:56。館山駅につくと、瀧口さん、仲間の真魚長明さん、友絵さんが出迎えてくれた。

左から真魚長明さん、友絵さん これから車2台に分乗して、上映候補のホールなどを案内してもらう。 まず、旧三芳村の道の駅のレストランで昼食をご馳走になる。 お互い初めて会うので、ここで自己紹介などする。

「空想の森」の上映をやりたいと私に連絡をしてきた瀧口さんは、 外房の太海(ふとみ)という町の出身。 5年ほど前に実家に帰ってきて、現在は化粧品の販売をしながら、 2年前から真魚さんと田んぼをいっしょに借り、 米をつくったり、味噌やしょうゆをつくったりする暮らしを始めた。 この日も午前中、地元の人たちとしょうゆの仕込みをしてきたそうだ。

真魚さんは東京出身で、世界を放浪していた。 サーフィンをしにこの町にやって来てそのまま住み着き、 現在、合気道の先生をする傍ら文筆業などもしている。 この地域に風を吹かせている人のようだ。

この旧三芳村は、昭和48年から有機農業に取り組んでいる町として知られて いるそうで、昔から農業が盛んなところなのだ。 しかしこの町もご多聞にもれず、耕作放棄地が増えている現状だそうだ。 それでもやはり、有機農業に取り組む農家は多いとのこと。 この道の駅のレストランも、地元の野菜をふんだんにつかったメニューが並んでいた。

この辺りは、コンクリートの原料となる土が出る山が多く、ずっと山が削られ続けてきた。 そのために、グランドキャニオンの様な荒涼とした姿が続く場所に変貌してしまったところが多いのだそうだ。 削られた土はダンプカーに満載され、東京方面にどんどん運ばれていく。 それに伴い様々な問題が発生していた。 今、鬼泪山(きなだやま)という国有林に指定された山が削られようとしている。 真魚さん、瀧口さんはその反対運動もしている。

そして、自分の暮らす地域をもっと面白くしようと、瀧口さんらが中心になって、 安房地人協会という名前で、映画の上映会、講演会などなど、色々な活動をしている。 その一環で、「空想の森」の上映会をやろうということになったのだ。 そして、私は今回、関東に来たついでに、上映会の前に一度瀧口さんに会ってみたいと思い、 安房を訪れることになったのだ。

昼食後、3箇所のホールを案内してもらった。 120人ほどのキャパの町の施設、房総半島で一番大きなホールとそこの会議室、 ローズマリーのテーマパークの中の100人ほどの劇場。 設備、金銭面などを総合的に考えると、 最後に行った会場が一番いいのではないかと、4人で話した。

外観 客席

この広い房総半島の南半分に映画館がなくなったそうだ。 海を渡り、東京や横浜に映画を見に行く人が多いという。 そんなところだけに、地味なドキュメンタリー映画を自主上することはかなり大変なことだと思う。 それを、きちんと宣伝して集客してやろうとしてくれている瀧口さんたちに、ありがたい気持ちでいっぱいになった。

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旅する映画 その12  高崎から渋谷へ

2009年4月10日。 9:19発の高崎湘南ラインに乗って渋谷へ向かう。 今日は、早川由美子さんと会う約束をしている。 彼女も自主制作でドキュメンタリー映画(「ブライアンとその仲間たち パーラメント・スクエアSW1」)をつくり、 それを今年の空想の森映画祭に応募してきたことが縁で知り合った。 東京の人だったので、同じ作り手として個人的に話をしたいと思い連絡を取ったのだ。 車中、どっと疲れが出て横たわりたいくらいヘロヘロだった。

11:10。渋谷着。待ち合わせのハチ公前に座ってぼんやり町を眺めていた。 やたらに騒々しい。音があちこちから耳に刺さってくる感じだ。 待ち合わせまで時間があるので、交番でコインロッカーの場所を尋ね、大きな荷物を預けた。 12:00に早川さんが私を見つけて声をかけてくれた。 早川さんのお勧めのチェコ料理のお店に向かって二人で歩き出した。

早川由美子さん 早川さんは、ジャーナリズムの勉強のためにイギリスに留学していた。 その時、国会議事堂の前で反戦運動をする人たちと出会い、キャメラを回し始め、 一本の映画を完成させ、今上映活動をしている。 私と共通するところもあり、お互いのことを色々話した。

おいしくご飯も食べ終え、場所を変えて一杯飲みながら話そうと、 私たちはセンター街の方へ歩いた。 そこで目についた台湾料理の店に入り、まるテーブルに座った。

せっかくだから、映画をつくっている友人たちも呼んでいっしょに話そうということになり、 私は、自分の仲間の一坪悠介君、新井ちひろさん、橋爪明日香さんに電話をした。 数時間後みんなやってきた。 早川さんも、根来さん、岡さん、向笠さんという映画仲間に電話して同じくみんなやってきた。 まるテーブルは8人でいっぱいになった。 そこで私たちは3時頃から夜10時過ぎまでずーっと飲みながら話をしていた。 私はいつの間にやら疲れも吹っ飛んで、すっかり楽しんだ。 作り手同士で話すことは、あまり機会がなかったので、こうして話せることは私は嬉しかったし、 刺激になったし、私もがんばろうという気持ちになった。 また、東京に出た時はみんで会いたい。

旅する映画 その11 すぎな農園から榛東村へ

2009年4月9日。 7:30。起床。 8:00。朝の仕事を始める。 進さんはもっと早くから起きて仕事をしている。 母屋の前の水道で、数個の大きなポリタンクに水を汲む。 家と山の上の鶏舎の途中に、餌を調合する小屋がある。

右手の小屋が飼料小屋

ここで飼料の調合し、小分けにする。

ここで週2回ほど、餌の調合をしている 竹渕さんはおいしくて安全な卵のために、餌に大変こだわっている。 98パーセント以上国産の飼料。 小麦、米の粉、米ぬか、魚粉(酸化防止剤不使用)、 おから(国産無農薬大豆)、カキがら、醤油かすなど。

軽トラに水と餌を積み、まず山の上の鶏舎へ。 鶏に水と餌をやりと卵採りだ。

まずは餌と水だ。私が餌をやる。 鶏舎へ入ると、鶏が待ちきれないのか、まとわりついてくる。 何箇所かに置かれた餌箱に餌を入れる。 一つの肥料袋に入っている餌を一つの鶏舎に使う。 餌は15キロほどあり、結構重い。

一輪車に水のタンクを乗せ、進さんは水やりだ。 この水のタンク、かなり重い。 人が働いている姿ってかっこいいと思う。 特に体を使う仕事は。 無駄のない動き、ちょっとしたコツが仕事がやりやすくなったりする。 鶏舎の横には、開墾途中の畑が広がっている。 掘りおこした桑の木の根っこがあちこちに顔を出している。 その畑を悠然と歩いている白いネコが一匹、小さく見えた。 田代「あの白いネコ、竹渕さんちの?」 進さん「そう。ビビっていうネコで、家の中で飼ってるゲンちゃんとかのお母さんなんだ。」 田代「ビビ!」 ビビは歩みを止め、こちらを見た。 竹渕「俺が呼んでもいつも無視なんだよ。かみさんと間違えたのかな。」 私はちょっと嬉しかった。

卵小屋の下。割れた卵を食べに来たビビ。

竹渕さんは外ネコ、家ネコをあわせて6、7匹のネコを飼っているのだ。 ゲンちゃんは、大きな目が印象的なシュッとした美しいネコで、 私はなでたり、だっこしたくてたまらなかった。 しかしなかなか顔さえもよく見せてはもらえず、やっと私の前に顔を出すようになったくらいだ。 仲良くなるにはもっと時間が必要だ。 外ネコは、たまに餌を食べに帰ってくるくらいなのだそうだ。 ここんちのネコは幸せだ。 出入り自由で、畑や林、自由にどこでも遊びに行ける。 そして家に帰ればご飯もあたる。

そして二人でいっしょに卵採り。 朝は特に卵を温めている鶏が多い。5羽も6羽も重なっていたりする。 それをどかしながら、にーじゅういち、、にーじゅうに・・・ と数を忘れないように数えながら卵を採る。

ある鶏舎の中で、鶏が騒いで一斉に右や左に飛んで、 ブワーっと砂やら餌が舞い上がった。 […]