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風のたより その11 東京にて

青山学院大学の入口にて。左から野村さん、私、石川さん。

 

2012年4月22日。

東京。青山学院大学の講堂へ小出裕章さんの講演会を聞きに行った。 落合恵子さんのクレヨンハウスが主催。

 

お昼に表参道で待ち合わせ、野村さん、石川さんとランチ。

久しぶりの乾杯をした。

野村さんは本を書き終えるという山を越し、また違う境地になっているようだった。

 

 

講堂へ向かうまでの道の新緑が気持ちよかった。

講堂入口は続々と人が集まってきていた。

1700人の会場は満席だった。

私たちは、野村さんの関係で、前方左側の招待席に案内された。

周りを見ると、錚々たる人たちが座っていた。

弁護士の海渡雄一さん、評論家の佐高信さん、作家の澤地久枝さん、作家の渡辺一枝さん、企業としていち早く脱原発を表明された城南信用金庫の理事長吉原毅さん、東京新聞「こちら特報部」のデスク田原牧さんなど。

私は小出さんのお話を聞くのは初めてだった。

今の福島原発がどういう状態なのか、食べ物のこと、がれきの処理について、小出さんの考えがよくわかった。

そして何よりもこどもを守りたいという小出さんの気持ちが伝わってきた。

小出さんの好きな絵本・『花さき山』の朗読を落合恵子さんがしたり、これも小出さんの好きな沢田研二さんの曲を流したりして、とても素晴らしい演出だった。

途中、画像が出ないというちょっとしたハプニングがあったが、司会の落合さんが素晴らしい対処とフォローをしていて、さすがだなあと思った。

最後に、「小出さん頑張ってくださいとは言いません。原発を止めるために、それぞれ自分に何ができるかを考えて、いっしょに歩いていきましょう。」というようなことを落合さんは言った。

ほんとにそうだと私も思った。

 

クレヨンハウス。

講演会が終わって、クレヨンハウスで打ち上げ。

「沢田研二の歌がよかったね。」などと話しながら、私たちは海渡さん、佐高さんといっしょに歩いて向かった。

クレヨンハウスは、素敵なところだった。本屋さん、地下にレストラン、やおやさんなどもあり、小さいこども連れの家族など、大勢の人でにぎわっていた。

たくさんのおいしい料理が出てきた。私は海渡さんと同じテーブルだったので、お酒を楽しみながら色々お話をして楽しかった。

澤地久枝さん、渡辺一枝さん、佐高信さん、海渡雄一さん、田原牧さん、鎌田慧さんなどが参加し、それぞれのテーブルで話がはずんでいた。

小出先生はこれが楽しみなんですと言って、おいしそうにお酒を飲んでいた。

 

 

落合さんは色んなところに気を配っていた。

私も野村さんに紹介してもらってご挨拶した。ほんと、パワフルな方だった。

 

著作にサインをする野村さん。

野村さんと石川さんは田原さんの本を持ってきていて、サインをしてもらった。

とても喜んでいた。

 

 

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新作撮影報告 その110 大間原発報告会 旭川・こども富貴堂にて

 

らいるのキッチンから

 

 

2012年3月13日。

朝ゆっくり起床。

音次郎さんは1階の工房で仕事。

理香子さんは森の幼稚園の準備。

 

私はゆっくり朝食をいただく。

 

10:00 お母さんとこどもたちが集まってきた。

今日は雪遊びの日のようだ。

らいるの前に高く積もっている雪の上で遊んでいた。

工房ぞうさん

私はキャメラを持ち、下へ降りて行った。

音次郎さんの仕事場を少し撮らせてもらうことに。

音次郎さんの仕事は、障がいのある人の車イスをその人が使いやすいように加工することだ。

音次郎さん

 

いっしょに働いている、アスマクン、マルチャン、バタコさんも撮影を快くオッケイしてくれた。

アスマクン

 

和やかで自由な雰囲気の仕事場だ。

工場では、男性陣3人が、時に井戸端会議をしながら仕事をしているそうだ。

最近はどうしても原発の話題が多くなってしまうそうだが、時々女性には聞かせられない話題もするという。

ここには、色々な種類の機械が置いてあり、車いすや器具の加工などを主にやっている。

バタコさん。

工場の奥は、車いすの背もたれや肘掛などの布を裁断して縫い合わせる仕事部屋。

 

ここでは、紅一点のバタコさんがたくさんの生地に囲まれながら一人仕事をしている。

 

いつもは四季で移り変わる周りの田んぼの風景をみながら仕事をしているが、今年は雪がハンパなく多いので、窓の外は雪で覆われている。

二階へ戻り窓の外を眺めると、子どもとお母さんたちはらいるの奥にある林の方に移動していた。

そこは田んぼだ。

今は一面の雪原。

 

段になっているところでゴムチューブに乗ってソリ遊びしていた。

なんだか盛り上がっている様子。

 

「雪遊び日和よ。陽子ちゃんもソリやらない?」

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新作撮影報告 その106  第5回大間原発訴訟口頭弁論

前菜。黄色いのが山田農場のチーズ・トム。

2012年3月8日。

野村さん、桜ちゃんと3人でランチに行く。

前から行きたかったコルツというレストランへ。

前菜盛り合わせが目にも美しく、そしておいしかった。

ワインをいただけないのが残念。

左から野村さん、さくらちゃん。

スタッフの女性が、ひとつひとつ、料理を説明してくれた。

その中に山田農場のトムというチーズがあった。

野村さんが「これをつくっているのは友人なんです」と嬉しそうに言った。

このデザートもおいしかったー!

 

デザートを食べ終わると、おもいがけずシェフが厨房から出てきた。

すると、シェフは午後から山田農場に行くとのこと。

そして「空想の森」を見たいと思っていて、まだ見ていないことなど、話がはずんだ。

 

午後から弁護士会館で弁護団会議に参加。

今回の意見陳述も2名。

その一人に小松幸子さんがいた。

小松さんは4人の子どもを持つお母さん。

福島県の鮫川村から函館に自主避難をしている人だ。お連れ合いは歯医者さんなので村に残り仕事をしている。

彼女の陳述は、胸にせまるものがあった。

 

会議の後、野村さんが小松さんと話し込んでいて、私を呼んだ。

そして明日、裁判の前に野村さん宅で小松さんの話を聞くことになった。

小松さんは話したいことがたくさんありそうだった。

私も話を聞きたかった。

野村さんは福島の人たちの思いを、何かの形で発信していきたいという思いを強くしたようだった。

 

 

 

2012年3月9日。

午前中、野村宅に小松さんがやってきた。

撮影をさせてもらいながら話をうかがった。

 

鮫川村でどんな暮らしをしてきたか、3月11日のこと、どうやって避難してきたか、原発のこと、放射能のこと、家族の今の状況などを話してくれた。

小松さんは言いたいこと・話したいことを、私と野村さんにありのまま話せていることがとても嬉しかったようだった。

私と野村さんもそれがとても嬉しかった。

小松さんと出会えてよかったと思った。

私たちも話したいことを話した。

小松さんがすっきりした気持ちで意見陳述ができたらいいなと私は思った。

 

 

 

そして私たちは裁判所へ向かった。

私にとって4回目の裁判。

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風のたより その6 函館・野村さんからの便り

函館・野村さんからの便りがきました。

 

田代さん、本の紹介、ありがとうございます。 昨年の3.11後の世界をどう生きるのか、 誰にとっても重たい課題だったと思います。 20数年大間原発に反対してきたわたくしにとって、 地震と原発はセットになった恐怖でした。

3月11日、午後2時46分ただならぬ地震の揺れの長さと大きさに原発は大丈夫かとすぐに思いました。 その後に出てくる情報の「嘘」に、身体の震えるような怒りと恐怖がおそいました。 政府と東電の嘘に、これはまた隠している、と確信しました。

隠しているのは放射能漏れで、それならすぐにでも子どもたちにヨード剤を配らなければいけないのに それをつたえるニュースも質問する記者もいません。 原子力資料情報室をはじめとするネット情報だけが頼りでした。

2010年12月に出版された京都大学原子炉実験所の小出裕章さんの「隠された原子力」の編集をさせていただきました。 原子力の世界にいながら、40年以上反原発の立場で研究をつづけてこられた方です。

反原発の市民グループを支えてきてくださいました。 完成した本を手に、これから続く長い未来を原発とそこから出るゴミと向かい合わなければならない子どもたちに 正しい原子力を伝える本が必要とつよく思いました。

原発を作った私たちはじきに死んでしまいます。 でも原発の後始末は子どもたちに残されるのです。 原発を作った世代は、原子力の正しい知識と情報を子どもにつたえる義務がある、そう思いました。 小出さんにそう話したところ、わたしに書くようにとの言葉でした。 資料を集め準備していたときに、福島の事故が起きました。

その後の時間をよくは覚えていません。 でも今できることがあるはず、との思いだけで時が動いていました。 ネット情報の中から、信頼できるものをブログに載せたり人に伝えたりしていました。

福島県の放射能の規制値を年間20ミリシーベルトまで上げ、子どもにも適用するとの文科省の通達はあきれて言葉もないものでした。 これからを生きる子どものための正しい情報をなんとしてもつたえたい、と強く思いました。 子どもに向けた本を書くことは、放射能で汚してしまった世界を残していく大人のできることはなんなのか、 自分へ問い続ける時間でもありました。

今、この本は私の手元を離れ、子どもに向けてメッセージを伝えてくれようとしています。 小出裕章さんは、原発を作っていけない理由は自分の理想とする社会と大きく隔たっているからと、 とインタビューで答えてくださいました。 自分より生きづらさを抱えたいきものにたいしてのまなざしで人が見えると、 より小さないのちへのやさしさをもてるかどうかの人の価値は決まると思う。 それに照らすと、すべての面で原発をゆるせない、そう答えてくれました。

原発の差別性、放射能の危険、地域の格差、エネルギー問題と 原発を取り巻くものはさまざまです。 いのちいじょうにたいせつなものはない、その観点でこの本を書かせていただきました。

そして子どもは自分で考える力を持ち、大人はそれをサポートしなければならないことも・・。

田代監督がこのコラムでも書いていたように 「今、今を生きること。それ以上に大切なことはない」 大好きな言葉です。 今を生きるために、未来を生きる子どもために、ぜひこの本をお手にとっていただけるとうれしいです。

野村保子

アマゾンURL http://www.amazon.co.jp/%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%81%AB%E5%8F%8D%E5%AF%BE%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%8C%E3%82%89%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%A5%E3%81%91%E3%82%8B%E5%B0%8F%E5%87%BA%E8%A3%95%E7%AB%A0%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AE%E3%81%8A%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%97-%E9%87%8E%E6%9D%91%E4%BF%9D%E5%AD%90/dp/486101218X/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1332165082&sr=8-1

『原発に反対しながら研究をつづける 小出裕章さんのおはなし』

私が新しい映画の撮影を始めてからいつもお世話になっている函館の野村さんが、本を書きました。

子どもにわかる原子力の本を書きたいと、野村さんはずっと前から考えていたそうです。

2012年3月22日。いよいよクレヨンハウスから出版されます。

『原発に反対しながら研究をつづける 小出裕章さんのおはなし』

野村保子/著 小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)/監修

257×210mm 112ページ クレヨンハウス/刊行 2012年3月22日

クレヨンハウスHP http://www.crayonhouse.co.jp/mojo/ProductInfo/product_id/135970