ラムヤート 今野満寿喜さん・美環さん
2012年6月20日(水)~22日(金)。
ラムヤートへ行くと思っただけで何だかワクワクしてくる。
洞爺湖という場所でめいっぱい生きているマスキくん、ミワさん、ゆうら、ゴンちゃん。
そこでいっしょに過ごしていると、体の中を風が通り抜けていくようなさっぱりとした気分になってくる。
今季からラムヤートは休みを一日増やし週休3日になった。
自分たちがここでよりよく暮らすことにエネルギーを注ぐためだ。
ゴンちゃん。
ラムヤートのパンをつくる、と決めたゴンちゃんは静かな闘志を漲らせ、目下パンの猛勉強中。
ゴンちゃんは目指すパンを熱く語ってくれた。
素材は洞爺のものを使いたい。
手でこねて、発酵も自然に、なるべく機械を使わずパンをつくりたいと。
将来は山を買い、家をつくり、エネルギーを自給し、木を植え、小麦を作り…と夢を語るゴンちゃん。
マスキくんは同じ夢を追う人ができてどんなに嬉しかろう。
マスキくんは、窯をつくっている最中。
まだもう少し考えなくていけないこともあり、完成までもう少しかかる。
さっそく工場を案内してくれた。
この冬の間、構造を補強したり、カフェスペースを少し広くしたり、そして工場が新しく生まれ変わっていた。
まず目に飛び込んできたのが壁の色。
そして大きな窓からは、通りと水の駅がよく見えてとても開放的だ。
カフェスペースを覗ける小窓も魅力的だ。
カフェスペース側はカウンター席になっていて、ここに座ったお客さんは工場の中を見られる。
ゴンちゃんとスタッフのアユミちゃんのファンには嬉しい席になる。
それから二階へ上がる階段が見える小窓が二つ配置されていた。
それがなかなかいい雰囲気なのだ。
階段を上がる足元が見える。
ガス台の壁の棚がまたいい感じだ。
カップやコーヒーの道具などが並んでいる。
その前には四角い大きめの机。
「新しい工場になってから、朝ごはんをここで食べることが多いんです。」
とミワさんは言う。
ここにずっと居たくなるような空間なのだ。
カフェスペースも壁に棚をつけたり、カウンター席をつくったりして、これまたいいスペースになっていた。
いやー、ホントマスキくんのセンスは抜群だ。
パンがないラムヤートは、ランチプレートとコーヒーをやっている。
ミワさんが洞爺の素材でランチプレートをつくっている。
これがまたおいしい。
洞爺の素材ももちろんいいのだけど、ミワさんの料理はホントおいしい。
マスキくんもいつも言う。
「オレ、毎日飯に命かけてるんだ。ミワさんの料理にハズレはない。」
「そんな毎日命かけられてもねえー。」
とミワさんは引き気味だ。
金曜日から営業なので、ミワさんは木曜日が仕込みの立て込む日となる。
おにぎり屋もやっているので、その仕込みもある。
なので木曜日は主にマスキくんが息子・ゆうらをみる日になっている。
ゆうらをみながら仕事をしているので、ゆうらが寝てから集中して仕事するということになり、深夜まで工場で仕事をするミワさんなのであった。
パンがない今は、ミワさんがラムヤートの食の部分を担っている。
ゆうらは3歳。もうすぐ4歳になる。
マスキくんそっくりのエネルギーの塊のような元気な男の子だ。
前に保育園に通っていたのだが、行きたがらなくなった。
ゆうらには行きたくない理由があった。
それでも最初は無理に通わせていたが、あまりに嫌がるゆうらを見て夫婦で話し合ったそうだ。
ゆうらを保育園に通わせるということは、結局仕事がスムーズにできるという自分たちのメリットのためであって、ゆうらのためではないという結論になり、通わせるのをやめたそうだ。
「ホント、ゆうらに悪いことしたな。」とミワさんはポツリと言った。
今、ゆうらは毎日本当に面白そうだ。
誰かかれかにみられて、起きている間中めいっぱい遊んでいる。
私も時々ゆうらと遊ぶ。
野球をしたのだけど、私の投げた球をゆうらはけっこう打ち返してくる。
そうするとこっちも本気になってくる。
午前中のある時間になると、ゆうらが通っていた保育園の園児たちが先生といっしょにラムヤートの前を歩いていく。
するとゆうらは大きな声で「おはよー!」と何度もみんなにさけぶのだ。
私もいっしょに「おはよー」とさけんだ。
店は休みでも訪ねてくるお客さんも多い。
そうするとミワさん、マスキくん、ゴンちゃんのうち、空いている人が店を案内したりする。
「休みの時の方がかえってゆっくり案内できたりするんですよね。」
とゴンちゃん。
マスキくんのこだわり。
マスキくんが店やおにぎり屋を案内した。
そして彼女は帰りのバスの時間まで、今野家の居間で過ごしていった。
夏になると、イベントが多くなってくる。
6月30日、ニセコで開催される「森のカフェフェス」にラムヤートも参加する。
その出店をマスキくんは製作していた。
そしてそこでそれを売ってこようと考えていた。
おにぎり屋の横の駐車場に材料と道具を運び込む。
ゆうらもつなぎを着てお手伝い。
ミワさんは工場で仕込み。
ゴンちゃんはパンの試作と勉強。
各自それぞれの仕事に打ち込んでいる。
工場のミワさんは、時々外を眺めたりしながら手際よく仕事をしている。
「マスキくんも、ゆうらをみてくれるし、ウチはゴンちゃんもいるし、ホント恵まれているワ。」
とミワさんは手を動かしながらしみじみと言った。
時々店の脇の細いドアから、ゆうらが駆け込んできたりする。
お昼。
風を切って走り爽快だった。
ランチもとてもおいしかった。
ゆうらがジュースをたのんだ。
一気に飲みそうになるゆうらにマスキくんは言った。
「ゆうら、目をつぶってごらん。十数えたらジュースが増えるかもよ。」
ゆうらは目をつむり、ゴンちゃんといっしょに十数えだした。
マスキくんはそっと、グラスの水をゆうらのジュースに注ぎ込む。
「目を開けて。ほーら、ジュースか増えてるよ!」
ゆうらは喜んでジュースをストローで吸った。
水の駅の方から何やら聞き覚えのある声がした。
京極町のミズホちゃんがノノちゃんと遊びにきた。
マスキくんは再び出店の製作にとりかかる。
「ゴンちゃーん」
人手がいるときにマスキくんは叫ぶ。
ミワさんが様子を見にやってきた。
「ここ駐車場なんだからね。ちょっと広げすぎ。もっと端によせて。」
マスキくんは先生に注意された生徒のようだ。
通りかかる人とあいさつをかわしたり、時々話に花を咲かせたりしながら。
ミズホちゃんとノノちゃんはこの晩も今野家でご飯を食べて帰っていった。
こうして今日もあっという間に一日が終わる。
ラムヤートで過ごす日々は、一瞬一瞬がキラキラしている。
その一瞬がかけがえのないものに思え、その瞬間を逃したくない、記録したい、
といつも思いながらファインダーから一瞬の連続を見つめている。
何でもない日常がとても愛おしく思えるラムヤートの日々。
喜びや楽しみ、そして希望は自分たちでつくりだすものなのだ。
と、ラムヤートで過ごす度に私は思う。
そして私はラムヤートのみんなに挨拶をして車に乗った。
帰りがけ、ラムヤートの並びの「コバコ」に寄った。
前に来た時、マスキくんがこの店の内装をやっていたのを撮影させてもらった。
それが完成して店がオープンしたのだ。
店に入ると、ちょうどお昼時。
お客さんでにぎわっていた。
店主のサオリさんも私のことを覚えていてくれた。
なかなか素敵な店になっていた。
食べ物もおいしそうだった。
私はキッシュ、ケーキなどをテイクアウトした。
今度洞爺に来たらここでランチを食べてゆっくりサオリさんと話したいと思った。
そして再び函館へと車を走らせた。
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