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旅する映画 その64 滋賀県・大津友の家にて その2

初の打ち上げにて。みんなで記念撮影。

2010年10月23日。

心に残る素晴らしい上映会だった。

9:00。

スタッフが友の家に集合。

前日の集計結果によると230枚以上前売り券が売れていて、午前中の上映に集中しそうだという事前情報。

それを聞いてお客さんがごったがえさないよう万全を期すようにみんなで打ち合わせた。

秋晴れの気持ちよい日になり、客足も伸びそうだ。

この陽気で大人数がホールに入ったら、暑くなる事は必至。

クーラーを入れることにした。


友の家入り口にて

いよいよ上映会が始まる。

会場、受付、交流の場、物販、食事の各担当に分かれて準備にかかった。

大ホール入り口

10時を過ぎるとお客さんが続々とやってきた。

共働学舎のチーズはすごい人気で、上映前から飛ぶように売れていた。


共働学舎チーズ販売は藤重さんの担当だった。

上映直前までクーラーのスイッチが入らずひやひやしたが、ギリギリで間に合ってよかった。

会場はあっという間に後ろの席までうまり満席状態になった。


挨拶をする中居さん。

上映会が始まった。

まず代表の中居さんがお客さんにご挨拶。

言い出しっぺの先輩の藤重さんからこの上映会の代表に指名され、この数ヶ月、彼女はどれだけがんばったことだろうか。

中居さんは大勢のお客さんを前に嬉しそうに、でも少し緊張気味に書いてきた原稿を読み上げた。

生真面目な彼女らしいいい挨拶だと私は思った。


私はいつものように会場の一番後ろから映画を観た。

お客さんはとても集中していた。

随所にちりばめた笑い所ではクスクス、時にはアハハと笑ったり、隣の人と話したりする声が絶えなかった。

音がきちんと後ろまで聞こえている証拠だ。

字幕を読む時は前の人の頭をよけるために、一斉にお客さんの頭が動いていた。

それにしても映画とお客さんの一体感がある上映だった。

暗幕の間やカーテンレールの上から外の光がもれていたし、画面は暗めだし、字幕も見えずらいのにもかかわらずだ。

映写をお願いした勝又さんは、会場の温度をいつも気にかけてくれた。

こまめにクーラーのスイッチを切ったり入れたり調整をしてくれた。

会場係の杉本さんや他のスタッフもあまりに光がもれるところを塞いだりと、少しでもいい状態で観てもらえるように細やかに心を配っていた。

けして最高の上映環境ではないけれども、主催者の気持ちが伝わり、映画をつくった作り手の気持ちもお客さんに伝わったのだと私は思う。


豊中友の会の皆さん。

上映が終わると、私は次々と観て下さった方たちとお話をした。

主催した大津友の会有志の呼びかけに、京都友の会、大阪友の会、豊中友の会の方々も遠方から足を運んでくださり、藤重さんがその方たちを私に紹介してくださった。

藤重さんはあなたたちも上映会をやったらいかがと熱心にけしかけてくれていた。

この大津友の家での大盛況ぶりを目の当たりにしながら、じゃあ私たちもやろうかしら・・・という感じになっていた。

中居さんが「じゃあ、バトンタッチね。」と、名古屋から引き継がれている映画のタイトルを京都友の会の塩見さんに渡した。


左:京都友の会の塩見さん。右:大津友の会の中居さん。バトンタッチした。

中居さんもお子さんが自由学園に行っているので、自由学園の父母会の方々にもお知らせを出していた。

そのため、父母の方が結構観に来てくれていた。

映画の中の聡美さんの悩みにも共感すると何人かの方が言っていた。


子供を自由学園に通わせている。

聡美さんの自由学園の同級生が二人、観に来てくれて私に声をかけてくれた。

彼女たちは「随分会っていないけれど、聡美さんは学生の頃とちっとも変わっていない。」と懐かしそうに言っていた。


聡美さんの同級生たち。

京都シネマ、滋賀会館、彦根上映会、ヒューマンドキュメンタリー映画祭と、もう何度も見に来てくれている京都の男性を見つけた。

「また観に来ていただいてありがとうございます。」とお礼を言うと、

「今までで一番反応がよかったねえ。いい雰囲気だったね。」と彼が言った。

そして「この映画は何回観ても飽きないわ。いつも違うことを感じる。」と嬉しい事を言ってくれた。

そして「次のはいつつくるの?次の映画をつくる時は製作協力するからね。」と言った。


調理室。ここでカレーを受けとる。

長い廊下は友の会で出しているカレーライスに並ぶ長蛇の列。

であいの森(小ホール)では各店の出店が出揃い、カレーを食べながらおしゃべりをする人でにぎわっていた。

スタッフもみんな張り切って動いていた。

友の家にこれだけの人が来たのは、始まって以来のことだという。


関西よつ葉連絡会の出店。

2回目の上映も混乱なくお客さんが入場。1回目より少ない人数だったが、予想以上に2回目もお客さんが入った。

そしてこの回もお客さんの反応がとてもよく、いい雰囲気の上映になった。


実保さんのお店。

8月のヒューマンドキュメンタリー映画祭でお会いした神吉良輔さんが観に来てくれた。

彼は関西に拠点をおいてドキュメンタリー映画をつくっている。

「犬と猫と人間と」の飯田監督の友人で、映画祭の時に紹介されたのだった。

最近「生きていく」という映画をつくった。

まさかほんとに観に来てくれるとは思っていなかったので嬉しかった。

そして色々嬉しい感想を言ってくれた。


くろだ農園の黒田一成さん。


黒田さんの野菜。

そしてあっという間に上映会は終わった。

全てのものはほぼ完売し、お客さんも予想以上にたくさん来たし、万々歳の結果となった。

片付けは素晴らしく素早く終わった。

そして、大津友の会初の打ち上げへと、駅前の中華料理屋に向かった。

丸テーブルを囲み、飲める人はビールで乾杯した。

中居さんは打ち上げを楽しみしていたそうで、実にうまそうにビールを飲んでいた。

そりゃそうだろうと思う。

中居さんをはじめとする有志のみんなは、この数ヶ月、日々の暮らし、例会、そして友の会の大きな催しもあったりした忙しい中、平行して初めてやる上映会の準備をすすめてきた。

そして予想をはるかに超える結果を出した。

やってみた手ごたえがみんなの心を高揚させていたようだった。

食べて飲んで喋って、みんないい顔をしていた。

私はただただ嬉しくて、中居さんもっと飲め飲めと思った。


藤重さん。

宴もたけなわの頃、今回の上映会の感想などを一人一人言う事になった。

それぞれ個性があり話もとてもおもしろかった。

最後の中居さんは、今までの思いのたけを、こみ上げてくる涙と共に話していた。

前日の準備が終わってから、忘れ物などで自宅と友の家を3往復もしたこと、前売りが直前までなかなか売れなくて心配していたが、みんなのがんばりで一気に売れたこと、今日友の家に入った時からウルウルしていて挨拶の時泣くんじゃないかと思っていたことなどなど・・・。

中居さんが話している間も色んな人から突っ込みが入り、泣いて笑って嬉しくて・・・何ともあたたかい会だった。


中居さん。

中居さんを見ながら、私は仲間と自主上映会を初めてやった時のことを思い出し、中居さんに大いに感情移入した。

ふと思った。

初めてやった自主上映会の体験が今も心にずっとあり、それと同じことを今度は自分の映画でやっているんだな、と。

そして、中居さん、杉本さん、奥田さん、勝又さん、私の5人で二次会も行った。

駅前にあるイタリアンの店・イーズカフェ。ここの店長の坂口さんは、「空想の森」が大津で上映される度に宣伝協力をしてくれている。

男前で料理の腕もいい青年だ。

野菜料理をつまみながら、ワインを飲んだ。

中居さんは本当に嬉しくて仕方ないようだった。

奥田さんも中居さんの気持ちがよくわかるので嬉しそうにしていた。

こういう気持ちを分かち合えるってなかなかあるもんじゃない。

中居さん思いっきり飲みましょう。

私は最後まで付き合いますよという気持ちだった。

また楽しく飲み、話した。

そして夜も更けお開きとなった。いい夜だった。

そして大津駅で奥田さん、勝又さんと別れ、杉本さんの車で中居さんを家まで送った。

中居さんは千鳥足で家に歩いて行き、私たちが見えなくなるまで手を振っていた。

 

2010年10月24日

朝、憲央さんと散歩に出かけた。

杉本さんの家は琵琶湖が見える山の中腹にある。

左手に琵琶湖を眺めながら山の方へ歩いて行った。

畑や昔ながらの家が多く散歩していて気持ちがよかった。

ここら辺の畑は近頃サルや鹿やいのししの被害がひどいらしい。

歩いているといたるところに古墳があった。

大きな石仏もあった。

信長の時代に焼き討ちにあった比叡山はすく近くだ。

その時代に捨てられたお地蔵さんがたくさん置かれている古墳もあった。

山の方から流れてくる水が沢になっていた。

きれいな水だ。

その水が集落の隅々まで水路で分けられて流されていた。

歩きながら、いつも面白い事ばかり言って人を笑わせている憲央さんが真面目な顔で昨日の映画の感想を話してくれた。

映画を見て、家族が一番大事なものだと思ったと。

私はちょっと感動した。

家に戻り朝食をいただき、啓子さん、憲央さん、実保さん、杉本一家と杉本農園に芋ほりに行った。

農園は坂本駅のすぐ近くにある。住宅地の中なのだが、川と田んぼに囲まれていてなかなかいい場所だ。

井戸も掘って水もある。

小屋もある。立派な農園だ。

農園の地続きの隣接したこんもりした土地に、とても目立つ一本の杉の木が立っている。

ここは宮内庁の土地でこれも古墳なのだそうだ。

面積がけっこうあるので、半分は貸し農園にしている。

色んな人が借りて作物をつくっているのだ。

農薬と除草剤を使わない事が借りる条件でその他は取り立てて決まりはない。

だから借りている人の個性はっきりわかっておもしろいのと実保さんは言う。

農園にはレモンやみかん、イチジクなど果実も植えてあった。

友の会の人からもお金を出資してもらったキューイフルーツはまだ実がなりそうにもない。

キューイは雌株と雄株をセットで植えないと実がならないことも初めて知った。


キューイフルーツ

私は芋を掘ったり、人参の間引きをしたりした。

人参にも肩がいかっているのは雄、なで肩なのが雌なのだそうだ。

啓子さんは水をまいたり、間引きをしたり、本当に農作業が好きなのだろう。

嬉々としていた。

憲央さんは昨晩飲み過ぎたらしく、あっという間にダウン。


杉本夫妻

天気予報通り、雨がぽつぽつ降ってきた。

農作業を切り上げて、4人でランチへ。

趣のある建物のお蕎麦屋さんで、きれいなお庭を眺めながらご馳走になった。

今回も杉本さん宅で色々おいしいものを食べさせて飲ませていただいてお世話になり、楽しい時を過させてもらった。

啓子さんに駅まで送ってもらい、中居さんと待ち合わせた膳所駅に向かう。

駅前の喫茶店で少し話した。

私は早速、「昨日だんなさんに何か言われました?」と聞くと、

「ねぎらってくれました。」との答。

きっと妻のがんばりを見ていて応援していたのだろう。

中居さんもまだ昨日の興奮がさめていないらしく「完全燃焼するって気持ちいいですねー。また何かやりたいですー。」と私に言った。

今回、大津友の会の有志の方に上映をしていただいて、友の会のことが前よりわかってきた。

そしてとても親しみを持つようになった。

真面目だけでない、色んなことに興味を持ちおもしろい人たちがたくさんいる友の会は素晴らしい会だと思う。

 

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