2009年7月27日。
荷物をまとめ、布団を片付け、支度をしていると8:20、仕事服を着た真知子さんが迎えに来る。
今日は月曜日。
もうすぐ仕事が始まる。
あわただしく荷物を車に積み、舞子駅まで送ってもらう。
3日間、本当にお世話になった。
そしてお会いできてよかった。そのお礼を言うと、「またいつでもデイを使っていいのよ。」と言った。
そして彼女は仕事に向かって車を発進させた。
電車1本で新開地に着いた。
まだ少し早かったので、劇場の近くの喫茶店でモーニングを食べる。
久しぶりのコーヒーを飲みながら、ぼんやりと真知子さんとの出会いを思ったりした。
今晩は樋野さんのところに世話になる。
3日目。10人ほどのお客さんが来てくれた。そのうちの4人は、宮下さんと文代さんが北海道に入植する前、神戸の福祉施設で働いていた時の同僚たちだった。
上映中、時折笑い声が場内にひびいていた。
上映後、彼らとお話をすると、「二人ともあの頃とちっとも変わってへんわ。」と。一人の女性が「文代ちゃんが、何もないけど幸せや、と言っていた意味がわかったわ。」と言った。
無事上映終了。
私が舞台挨拶をするのは今日で終わりだ。
今晩は樋野さんの家に泊めてもらうので、荷物をアートビレッジに預かってもらう。
そして樋野さんに近くの風呂屋を調べてもらった。
三宮の駅の近くに女性専用の温泉があることを教えてもらい、樋野さんの仕事が終わるまでそこでお風呂に入ってゆっくり過すことにした。19:00にまたアートビレッジに戻ってくることにして、私は空身で三宮に向かった。
この時私は結構ヘロヘロだった。
その温泉は三宮駅から歩いてすぐだった。
温泉やサウナに入った後、仮眠室で眠った。
時間に起きると、体はまだ重いが、だいぶ回復したような感じがした。
そして気分はさっぱりとしていた。
アートビレッジに戻ると、間もなく樋野さんの仕事が終わり、映写の松浦さんといっしょに帰途に着いた。
途中食材やビールなどの買い物して、樋野さんのお宅に向かった。
今晩は友人を何人かよんでいるとのこと。
樋野さんの部屋はこざっぱりしていた。
さっそくグラスや箸を用意したり、フランスパンを切ったり3人で準備を始めた。
樋野さんは押入れからコタツ机を出し和室に置いた。
胡瓜とらっきょうの酢醤油ごま油あえ、バオバブ入りココナッツミルクカレーなど、前の日から仕込んでいた料理をテーブルに並べた。
バオバブは色々と薬効があるとのこと。そしてビールで乾杯。
まもなく仕事を終えた友人がやってきた。アートビレッジの同僚の福島さん、ギャラリー島田の法橋さん。
女5人でにぎやかな夕食となった。
樋野さんの料理はなかなかおいしかった。
ベランダに出てみると、ミニトマト、ナス、ひょうたん、レモングラス、バオバブなどなど、実に色んな種類の植物を彼女は育てていた。
手すりの柵にも蔓をはわせている。
バオバブは種から育てたそうで、小さな鉢の中の緑は、まだとても小さかった。
ここ最近の日照不足ですっかり元気がなくなってしまったそうだ。
確かにくたっとしていた。
本橋さんの映画に出てくるような木になるには100年かかるそうだ。
手作りの料理、気心の知れた友人、けなげに育っている植物たち。
これだけあれば豊かではないのかなあと私は思った。
日付が変わる頃、みんな帰っていった。
それから樋野さんと私はお茶を飲みながらなんとなしに話をしていた。
仕事のこと、映画のこと・・・。
理知的・物事に動じない。
そんな印象を私は彼女に持っていた。
のんびりとやわらかな関西弁で話す彼女の言葉の端々から、その印象とは違い、強く熱い映画に対する想いが感じられた。
彼女は神戸アートビレッジセンターで自分を表現しているのだなあと思った。
気がつくと、時計は5:30をまわっていた。
「少し仮眠しましょか?」と彼女は言った。
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