2017年7月1日。
益子・ヒジノワでの「風のたより」1回目の上映に、少し遅れて会場に入った女性がいました。
上映後、その彼女は私に話しかけてきてくれました。
「とってもよかったです。笑って泣いて、3時間があっという間でした!!
私が暮らすいわき市で上映会をやりたいです。いわきの人に見てもらいたいんです。」と。
「えー、ほんとですかー!!」
この時、私は心底嬉しかったです。
「周りの人がどういう受け取り方をするか、全くわかりませんが、やってみたいんです。」
と彼女。
もちろん、私は全力で協力します。
そして翌日、「風のたより」をみた感想をメールで届けてくださいました。
以下、彼女の感想を掲載させていただきます。
掲載は了承済みです。
(*文の中で、大間原発の再稼働とありますが、正しくは工事再開です。大間原発はまだ完成していません。)
田代 陽子さま
こんにちは。
昨日のヒジノワでの上映会、ありがとうございました。
「風のたより」の映画の感想をお送りいたします。
少し長くなりますが、読んでいただけたら幸いです。
この映画を知ったきっかけは、益子の隣町の茂木で6月に開催されたマルシェへ出店した時、
隣のブースに出店していた五月女尚子さんの店先に貼ってあったチラシを見たことでした。
チラシには、ラムヤートさんのことが書いてあり、
以前、友人から聞いて関心があったので観たいと思いました。
初めから上映時間が長いので、、、と聞いていましたが、
実際は、あれ?もう終わり?といった感じでした。
観ながら笑ったり、微笑んだり、そんな家族の当たり前の日常やこれが幸せなんだよなと思えるシーンにあふれていました。
その反面、青森大間の漁師一家の大間原発再稼働への恐怖や不安の映像は、
私の住むいわき市沿岸部と重なり、涙が出ました。
原発への不安や恐怖、家族がバラバラになる寂しさ、私にはよくわかります。
大間のお父さんが、再稼働したら孫は、出す。といった言葉にも涙が出ました。
原発講演会のシーンで、福島の病院の避難したまんまの映像を見て、
家族が「こんなだったんだ」とつぶやくシーンにも涙。
福島のことは、やはりあまり知られていないのだなと。
封じ込めていたいろんな感情が一気にこみ上げました。
いい映画でした。
心に温かな余韻と優しい光を与えてくれた映画でした。
憎しみや怒りばかりでは、何も変わらないです。
監督のメッセージにも深く共感を覚えました。
私は9年間、益子に住んでいました。
震災前から思っていたことですが、人の生活の基本は、土の上だと感じます。
自然の恩恵を受けて生きてきた私たちは、今そこへの感謝や原点を忘れているような気がするのです。
福島県いわき市に住んでいるため、原発事故が起きた13日に家族みんなで益子の友人宅に避難しました。
益子へ避難できるだけのガソリンを残しておいて本当によかったです。
その避難道で、私は痛切に感じました。
水道、ガス、電気、ガソリンなどライフラインが断たれると、私たちは生きていけない。?
なんかそれっておかしくない?
便利すぎるんじゃないか?
お金とかかかりすぎじゃないか?
やっぱり無理があるんだと。
もっと小さなコミュニティで、お金も最小限で生活できないものなのか?
そこからの生活には、本来の幸せや生きてるリアリティが得られるのではないか?
そして、いつかそんな生活をしたい。と思ったのです。それが、自然なのではないかと。
この映画を観るきっかけにも付け加えると、
ラムヤートさんたちがそれに近い生活を実践しているような話を友人から聞き、
ずっといつか行ってみたいと思っていたからです。
上映会の後の交流会でも、五月女さんが言っていた内容にも共感しました。
じゃ、益子に戻ったらいいじゃない。そういう友人もおりますが、私も出来たらすぐにでも始めたいです。
でも、震災後、ふるさといわきのこと、両親のこと、いろんなことを考えると身軽にはいけないのが現実です。
福島にいないとわからないこともたくさんあり、その狭間で過ごしてきた震災後でした。
生きるってこと、死ぬってこと、コミュニティって、家族って、人生って、、、
この映画を観て、なにかヒントを得られるのではないかと希望をもっていったのです。
いわきのこと
福島県は、震災後、避難者で人口が減りましたが、
いわき市は、原発近くの帰宅困難地域の避難者が入り、
住宅は増え、飲食店は混雑し,道路も渋滞などと生活環境はだいぶ変わりました。
また、原発作業員の方々も旅館やホテルにはいっぱいです。
他にもいろんなことが原発事故で変わりましたが、
やはり他県の方にはわからない現実が日常にあります。
震災後の市議会議員選挙も自民が圧勝、県議員選挙も自民が圧勝、
ありえない現実にへこみましたが、これも現実です。
震災後、いわきではこういった映画の上映会は、ほとんどありません。
人々の心の中は、どうなんだろう。
忘れたい、思い出したくない、そんな気持ちの方も多いと思います。
でも、なかったことにはできない大きな出来事を、
自分なりに時間をかけて現実として生きていかなければならないと思います。
監督がおっしゃるように、ひとりひとりが大切なんだと、
そして共鳴していくこと、重なって繋がっていくことが大切なんだと。
そんな、きっかけにこの映画を観てなっていただけたらなと、
私が抱いたような気持ちになってもらえたらなと、思うのです。
もしかしたら、益子のような結果は期待できないかもしれませんが、
精一杯頑張りますので、よろしくお願いいたします。
今度は、いわきでお酒でも飲みながらお話したいです!
長々とすみません。ありがとうございました。
船生 有紀
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