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新作撮影報告 その101 ラムヤート・5年目の冬 その4

 

 

2012年3月4日。

快晴。

午前中、色々撮影。外ではマスキ君の薪をつくっている。

マスキ君は本当によく体を動かして働く。

ユウラとイッキュウは二人で雪遊び。

ユウラが年下のイッキュウに気を配る様子がなんともかわいい。

居間ではミワサン、ヨウコさん(三浦さんのお連れ合い)が話をしている。

その横でゴンちゃんはパンの試作に励んでいる。

 

私がラムヤートに滞在している時、毎日色んな人が訪ねてくるし、入れ替わり立ち代わり誰かが泊まっていく。

まるで宿のようだ。

そしてミワさんがとても自然に来客や子どもたちに細やかに心を配っている。

ここに集まってくる人たちと話すことも、私の楽しみの一つである。

ラムヤートでみんなと共に過ごしていることが、私の細胞に浸透していく。

 

私は傍らにいつもキャメラを持っている。

そして撮りたいと思ったら撮影をする。

撮影をしながらいっしょに過ごしていると、みんなが私を受け入れてくれていることを感じる。

だから私は嬉しくて心が軽やかになり、何でもできるような気になってくる。

 

ミワさんは元看護師。8年ほど前にマスキ君と洞爺にやってきてラムヤートを立ち上げた。

ラムヤートという店は、パンがおいしいのはもちろんだが、マスキ君とミワさんを中心に、

ひとりひとりのスタッフの個性が発揮されているなあと私は感じる。

あたたかくて、柔らかで、風通しのいい雰囲気をつくっているのはミワさんとマスキ君だと思う。

 

「私とマスキ君の役割がはっきりしている。」とミワさんが言うように、

二人は夫婦であると同時に、志を同じくする同志であると私はいつも感じる。

 

ユウラを産んでから、今までずっと子育て中心で家の仕事を主にやっていたミワさんが、

最近7年ぶりに週2回だけ隣町の病院で働き始めた。

それがとっても新鮮で面白いとのこと。

仕事に子育てに、ミワさんはますます活き活きしていた。

 

ご飯支度をするミワさんを撮影していた時、ファインダーの中のミワさんが内側からピカピカと光り輝いて見えた。

私は思わず、「ミワサン、美しいわ」とつぶやいた。

 

お昼。マスキ一家と三浦一家といっしょに外食。

といっても、道をはさんだ向かいの道の駅。

みんなでにぎやかに食事をして、ラムヤートに歩いて戻る。

 

マスキ君はさっそく店の前の除雪。

そこに近所のおばさんが通りかかった。

「こんにちはー!」とマスキ君はいつものように元気な声であいさつして世間話。

「あんたよく働くねー。」とおばさん。

このシーンを撮影できて私はとても嬉しかった。

 

一日ひとつ、ああ、これが撮れてよかったと思えるものがあればいいと思っているが、

今回の撮影では一日に二つ三つあるのが嬉しい。

 

14:00。今日は洞爺湖町の町民文化祭。三田健司さん率いる「トヤトヤ」というアフリカ太鼓のグループもこれに出演する。

ミワさん、チャイチャイ、コグレさんなど、みんなトヤトヤのメンバーだ。

タイコをたたく人とダンサーに分かれて15分ほど演奏する。

タイコたたく人が足りないからと、私も急きょ参加することになった。久しぶりにタイコだ。

一応、キャメラも持っていくことにした。

コグレさんが迎えにきてくれて一緒に会場へ向かった。

道中の洞爺湖と山々がキリリと美しかった。

 

会場に着くと、もう演奏時間がせまっていた。

控室には誰もいなかった。

あわてて着替えをして舞台に向かうと、舞台ではもうトヤトヤの演奏が始まっていた。

わらわらとミワさんたちは合流。

私はまずはミワさんを撮影しようと思い、舞台の袖から、そして最後尾から撮影した。

ミワさんが楽しそうにタイコをたたく傍らで、ユウラは固まっていたのがおかしかった。

ひとしきり撮影して、キャメラを置き、舞台に置いてあったタイコを抱えて私も演奏に参加した。

あっと言う間だったが、とても面白かった。

 

演奏後、控室で着替えながらメンバーと歓談。

こども連れのお母さんが多く、ここも子供でいっぱいだった。

ミアキちゃんも子どもたちと参加していた。

三田君にお礼を言うと、

「いつ入ってきたか、ぜんぜん気がつかなかったです。」と言って笑った。

洞爺に縁をつくってくれたのは三田君だったと改めて感謝。

 

ラムヤートに戻る。ミワさんは夕食の支度。

手早く手際よく料理をする。

薪ストーブも大事な熱源だ。

「今日は田代さんが来て初めて家族だけになったね。」

などと話していると、コグレさんがやってきた。

そしてまたにぎやかな食卓を囲んだ。

そしてコグレさんは泊まっていくことになった。

 

夜、コグレさんは腰が痛いと言うマスキ君にマッサージをした。

マスキ君をうつ伏せにして、まず足からマッサージを始めた。

マスキ君は「あー気持ちいい」と連発していた。

しばらくしてコグレさんが

「ふーん。マスキ君ってこんな足してるんだ。マスキ君のこと見直したわ。」と言った。

マッサージをしながらの二人の会話が面白くて仕方なかった。

 

マッサージが終わって、マスキ君はミワさんと初めて出会った時のことや、

ラムヤートを立ち上げたばかりの頃の話などをした。

とてもいい話だった。

 

深夜。就寝。

マスキ君は一人パソコン仕事。

オークションの出品だ。冬の大事な収入源になる。

 

ラムヤート最後の晩だった。

家族も友人も、居間がみんなの居場所。

ここで食べて、話して。

ラムヤートのこと、家族のこと、友人のこと、猫のこと。

話題は事欠かない。

冬。ほとんどのことがここである。

マスキ君、ミワさん、ユウラ、ゴンちゃん。

家族が一つの目的に向かってそれぞれ自分の役割を考えて日々を積み重ねている。

その過程を味わい、共有しながら。

ワクワクした気持ちで、毎日自分たちの暮らしをつくってゆく。

これが生きるということなのだと思わされる。

 

ラムヤートでのこの数日間は小さな感動の連続だった。

私の心は妙に静かにすっきりした感じだ。

ラムヤートの面々がつくり出す日々と私の映画が、ゆっくりとシンクロしていくような撮影だった。

 

2012年3月5日。

今日はミワさんがお仕事に行く日。

3歳のユウラは、まだお母さんにべったりしていたい。

ミワさんはユウラに気がつかれないように仕事に行く支度をする。

私もこれから道南に移動するため荷物をまとめていた。

そしてミワさんと握手をして別れた。

そうしたら、それに引き続いてミワさんは、ゴンちゃん、ユウラ、マスキ君とも握手をして出かけていった。

なんだかとても良かった。

 

今回のラムヤートの撮影はみんなといい時間を共にした。

もう少しみんなといっしょにいたい。

また撮影に来よう。

できたらキャメラの一坪君を連れてきたい。

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