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風のたより その6 函館・野村さんからの便り

函館・野村さんからの便りがきました。

 

田代さん、本の紹介、ありがとうございます。
昨年の3.11後の世界をどう生きるのか、
誰にとっても重たい課題だったと思います。
20数年大間原発に反対してきたわたくしにとって、
地震と原発はセットになった恐怖でした。

3月11日、午後2時46分ただならぬ地震の揺れの長さと大きさに原発は大丈夫かとすぐに思いました。
その後に出てくる情報の「嘘」に、身体の震えるような怒りと恐怖がおそいました。
政府と東電の嘘に、これはまた隠している、と確信しました。

隠しているのは放射能漏れで、それならすぐにでも子どもたちにヨード剤を配らなければいけないのに
それをつたえるニュースも質問する記者もいません。
原子力資料情報室をはじめとするネット情報だけが頼りでした。

2010年12月に出版された京都大学原子炉実験所の小出裕章さんの「隠された原子力」の編集をさせていただきました。
原子力の世界にいながら、40年以上反原発の立場で研究をつづけてこられた方です。

反原発の市民グループを支えてきてくださいました。
完成した本を手に、これから続く長い未来を原発とそこから出るゴミと向かい合わなければならない子どもたちに
正しい原子力を伝える本が必要とつよく思いました。

原発を作った私たちはじきに死んでしまいます。
でも原発の後始末は子どもたちに残されるのです。
原発を作った世代は、原子力の正しい知識と情報を子どもにつたえる義務がある、そう思いました。
小出さんにそう話したところ、わたしに書くようにとの言葉でした。
資料を集め準備していたときに、福島の事故が起きました。

その後の時間をよくは覚えていません。
でも今できることがあるはず、との思いだけで時が動いていました。
ネット情報の中から、信頼できるものをブログに載せたり人に伝えたりしていました。

福島県の放射能の規制値を年間20ミリシーベルトまで上げ、子どもにも適用するとの文科省の通達はあきれて言葉もないものでした。
これからを生きる子どものための正しい情報をなんとしてもつたえたい、と強く思いました。
子どもに向けた本を書くことは、放射能で汚してしまった世界を残していく大人のできることはなんなのか、
自分へ問い続ける時間でもありました。

今、この本は私の手元を離れ、子どもに向けてメッセージを伝えてくれようとしています。
小出裕章さんは、原発を作っていけない理由は自分の理想とする社会と大きく隔たっているからと、
とインタビューで答えてくださいました。
自分より生きづらさを抱えたいきものにたいしてのまなざしで人が見えると、
より小さないのちへのやさしさをもてるかどうかの人の価値は決まると思う。
それに照らすと、すべての面で原発をゆるせない、そう答えてくれました。

原発の差別性、放射能の危険、地域の格差、エネルギー問題と
原発を取り巻くものはさまざまです。
いのちいじょうにたいせつなものはない、その観点でこの本を書かせていただきました。

そして子どもは自分で考える力を持ち、大人はそれをサポートしなければならないことも・・。

田代監督がこのコラムでも書いていたように
「今、今を生きること。それ以上に大切なことはない」
大好きな言葉です。
今を生きるために、未来を生きる子どもために、ぜひこの本をお手にとっていただけるとうれしいです。

野村保子

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