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撮影報告 その62 大間の漁師・山本さん

大間の漁師・山本さん。後ろが山本さんの船・宝昭丸。

 

20111126日。

朝起きると、窓から函館がよく見えた。

函館山、五稜郭タワーまでも。

本当に近いと実感。三脚を立て、窓から撮影をした。

うっすら見えるのが函館山。

奥本さんが10時過ぎに宿に来てくれた。

そして一坪君を紹介した。

左から一坪君、奥本さん、野村さん。

 

少し話して、11時過ぎ、一緒に山本さんの家へご挨拶に向かった。

朱美さんがかぼちゃもち、つけもの、イカ、リンゴなどを用意して待っていてくれた。

一坪君を紹介し、ごちそうになりながら色んな話をした。

心に残る話が多かった。

 

山本さんがこんなことを言った。

「田代さんの映画のHP見ました。

その中の福島の会津若松の片岡輝美さんの話を女房と二人で見てボロボロ泣きました。

それで、自分の獲った放射能検査をしなきゃならないと思いました。

どうやったらいいんだべなあ。」私はびっくりした。

実は初めて山本さんにお会いした24日の日、色々な話の中で、山本さんは自分の獲った魚の放射能検査したくないと言っていた。

した方がいいのだろうが、もし出たらどうしたらいいのかわからない。

だからしたくない。漁師をやめてキノコ栽培でもやろうなかとも言っていた。

それを話している時の山本さんの顔は本当につらそうだった。

自分でも心配なものを売らなくてはいけない苦しさはどれほどなのだろうと私は想像するしかなかった。

この秋の撮影で群馬にいった時も、農家の人たちが漁師の山本さんと同じように苦しい思いをしているのを目の当たりにした。

どれほどの生産者の人たちがつらい思いをしているのだろうと思うと胸がつぶれるようなやりきれない気持ちになってくる。

その山本さんが会津若松の輝美さんの話で、検査をしようと思ったのだ。

私はとても嬉しかった。

でも山本さんはぼそっと「HP見なかった方がよかったなあとも思ったりもする。」と言った。

正直な気持ちだと思う。

一人じゃできないからどうやって漁師仲間に話すのか、もし出たらどうするのか、これからの課題は山のようにある。私たちも頭を抱えながら色んなアイデアを言ったりした。

もう一つ。山本さんの話。

これは女房にも言ったことないんだけどと、山本さんは話しだした。

漁の最中、荒れた沖で船の中に海水がどんどん入ってきて船を立て直せず何度も死ぬ目にあっているそうだ。

その時、とにかく息子を助けたい、他に何もいらないと本当に思ったという。

自分の遺伝子を継いだ息子がもう一人の自分のように思えると。

そして福島の子供たちの話題になると、朱美さんは涙を流しながら声を詰まらせた。

野村さんも泣いていた。

その時、山本さんがとてもやさしい顔で「母ちゃん、お茶持ってきて。」と言った。

朱美さんはそれに気が付かず泣きながら話していたら、山本さんがもう一度「母ちゃん、お茶持ってきて。」と言った。

朱美さんは「あー、お茶ね。」と言ってちょっと笑って台所に立っていった。

私はなんだか温かい気持ちになった。

左から野村さん、山本さん、一坪君。

野村さんが午後のフェリーで函館に帰るので、山本さんの家を後にした。

そして山本さんの船のある港に寄り、私たちが乗る船を見せてもらった。

想像していたより大きな船だった。

でもきっとすごく寒いことには間違いなさそうだ。

船の前で山本さんと記念撮影をした。

そして野村さんをフェリー乗り場まで送った。

野村さんは一坪君をすっかり気に入ったらしく、「函館にも来てくださいね。」と言って、小走りにフェリーに乗り込んでいった。

出航の時間にギリギリ間に合った。

奥戸の丘にて。一坪君。

 

そして、その後、一坪くんといっしょにあさこはうす、奥戸(おこっぺ)の丘、西吹付山展望台をまわりながら、大間原発のこと、今までの撮影のことなどを説明をした。

西吹付山展望台より

昨日とうって変わって天気がいい今日は、夕方まで北海道がよく見えた。

大間崎、函館山、五稜郭タワー、そして大間原発の建屋。山々を切り裂くような送電線。

西の海に目をやると雲の切れ間からの太陽の光が輪になって海に降り注いていた。

幻想的だった。

 

西吹付山展望台より

宿にもどると、宿のお母さんが、おにぎりをにぎってくれて、漬物やイカの一夜干しなどを部屋に持ってきてくれた。

一坪君となんだかんだと原発のことや撮影のことなどを話しながら、夕食をすませる。

キャメラの種類のこと、今使っているキャメラの使い方、関東と関西のヘルツの違いの話など色々教えてもらいとても勉強になった。

ミキサーを持ってきてもらったのだけど使い方がわからず、岸本君に電話をしたが、つながらず。

このロケのために新しく買ったばかりの三脚の水平がおかしいことに一坪君が気が付いた。

画面の右があがっているのが見てわかった。足は水平が取れていたので雲台が傾いていることが判明。

買った店に電話しなくては。

そして私は今日の漁師の山本さんの話を会津の片岡輝美さんに話したくて電話をかけた。

山本さんの話、24年ぶりの大間での学習会のこともかいつまんで話をした。

輝美さんも元気そうだった。

声が聞けて嬉しかった。

それから新得の宮下さんに電話をかけ、文代さんに今までのことをざっと話した。

そして一坪君も宮下さんとひとしきり話す。

明日は雨の予報が出ていたので、少しゆっくり過ごすことにした。

私は毎日コーフンして少し疲れが出てきたようだ。

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