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旅する映画 その36 神戸アートビレッジセンター3日目

2009年7月27日。 荷物をまとめ、布団を片付け、支度をしていると8:20、仕事服を着た真知子さんが迎えに来る。

今日は月曜日。

もうすぐ仕事が始まる。

あわただしく荷物を車に積み、舞子駅まで送ってもらう。

3日間、本当にお世話になった。

そしてお会いできてよかった。そのお礼を言うと、「またいつでもデイを使っていいのよ。」と言った。

そして彼女は仕事に向かって車を発進させた。 電車1本で新開地に着いた。

まだ少し早かったので、劇場の近くの喫茶店でモーニングを食べる。

久しぶりのコーヒーを飲みながら、ぼんやりと真知子さんとの出会いを思ったりした。

今晩は樋野さんのところに世話になる。

宮下さんと文代さんの昔の職場の同僚たち

3日目。10人ほどのお客さんが来てくれた。そのうちの4人は、宮下さんと文代さんが北海道に入植する前、神戸の福祉施設で働いていた時の同僚たちだった。

上映中、時折笑い声が場内にひびいていた。 上映後、彼らとお話をすると、「二人ともあの頃とちっとも変わってへんわ。」と。一人の女性が「文代ちゃんが、何もないけど幸せや、と言っていた意味がわかったわ。」と言った。

無事上映終了。

私が舞台挨拶をするのは今日で終わりだ。

今晩は樋野さんの家に泊めてもらうので、荷物をアートビレッジに預かってもらう。

そして樋野さんに近くの風呂屋を調べてもらった。

三宮の駅の近くに女性専用の温泉があることを教えてもらい、樋野さんの仕事が終わるまでそこでお風呂に入ってゆっくり過すことにした。19:00にまたアートビレッジに戻ってくることにして、私は空身で三宮に向かった。

この時私は結構ヘロヘロだった。

その温泉は三宮駅から歩いてすぐだった。

温泉やサウナに入った後、仮眠室で眠った。

時間に起きると、体はまだ重いが、だいぶ回復したような感じがした。

そして気分はさっぱりとしていた。

アートビレッジに戻ると、間もなく樋野さんの仕事が終わり、映写の松浦さんといっしょに帰途に着いた。

途中食材やビールなどの買い物して、樋野さんのお宅に向かった。

今晩は友人を何人かよんでいるとのこと。

食卓

樋野さんの部屋はこざっぱりしていた。

さっそくグラスや箸を用意したり、フランスパンを切ったり3人で準備を始めた。

樋野さんは押入れからコタツ机を出し和室に置いた。

胡瓜とらっきょうの酢醤油ごま油あえ、バオバブ入りココナッツミルクカレーなど、前の日から仕込んでいた料理をテーブルに並べた。

バオバブは色々と薬効があるとのこと。そしてビールで乾杯。

[…]

旅する映画 その35 神戸アートビレッジセンター2日目

2009年7月26日。 8:00。

真知子さんが迎えに来る。

藤本家にて朝食。

居間に入るとシェリーが私の足に体をすり寄せてきた。

そしてそっと頭をなぜると今度は頭をゴシゴシと力強くすりつけてきた。

朝からとても嬉しくなり、台所で朝食の支度をしている真知子さんに「真知子さーん、シェリーが触らせてくれた。」と叫んだ。 鯛茶づけ、たちのバター焼き、海老の素揚げ、レンコン入りさつま揚げ、モロヘイヤなど、朝から豪華な食事をいただいた。 9:40。

名残惜しいがシェリーに別れを告げ、真知子さんに車で劇場まで送ってもらう。 10:15。

アートビレッジに到着。

大阪からS夫妻がまた観に来てくれた。

今回は嬉しいことに奥さんの母上もいっしょだった。

左が私、右が柏木桂さん(宮下文代さんの弟さん)

映画に登場する宮下文代さんの弟、桂さんが声をかけてくれた。

よく見ると文代さんによく似ている。

話し方や雰囲気がこれまたそっくりだった。

京都で見損なったレンゲさんも友人二人を連れてやってきた。

「京都シネマ、レンゲさんのおかげであれから途中入場させてくれることになったんだよ。」と報告すると彼女は喜んでいた。 本橋成一監督も「バオバブの記憶」の舞台挨拶のために来ていたのでご挨拶をした。

東京のポレポレで一度お会いしたことがあった。

本橋さんはそれを憶えていてくれた。 時間になり初めのご挨拶をしてから上映開始。

今日はまずまずの人数だ。

私は一番後ろの席に座り、お客さんの頭越しに大きなスクリーンに映し出された「空想の森」を観る。 上映終了後、質疑応答。

文代さんの弟さんを紹介する。 引き続きロビーでお客さんとしばらくお話をする。そしてレンゲさんたち3人と昨日の食堂にランチに行くことになった。

この日はざるそばを注文した。 レンゲさんは2回目の映画の感想を話してくれた。

[…]

旅する映画 その34 神戸アートビレッジセンター初日

 

2009年7月25日。 7:30。起床。

身支度を整えた。

8:00。真知子さんが迎えに来た。

冷房を切り、鍵を閉めた。

車で5分ほど走ると自宅に着いた。

玄関を上がると、ご主人の俊之さんが迎えてくれた。

ご挨拶をして、真知子さんが支度をしてくれた朝食をいっしょに食べた。

俊之さんは、会社をつくり映像の仕事をしている。

今日は午後から仕事に行くことにしたので、真知子さんといっしょに「空想の森」を観に来てくれるのだ。

それを聞いて私は緊張してきた。 8:40。外に出ると、雨が降り出した。

真知子さんの運転で車に乗り込む。

雨足は次第に強まり、新開地に着く頃にはひどいどしゃぶりになっていた。

私は劇場の近くで下ろしてもらい、真知子さんたちは駐車場を探しにいった。

アートビレッジの受付で樋野かおり支配人をよんでもらった。

樋野さんとは7、8年前、青森で開催されたフィルムネットワーク会議で初めて出会った。

それからぽつぽつとやり取りをするようになり、「空想の森」応援団にもなってくれた。

そして昨年12月、大阪・第七芸術劇場の上映の時に、ここに営業に来た。

私にとってここで上映できることは本当に嬉しい。

樋野さんが「空想の森」を気に入ってくれた、ということだからだ。

上映が決まると樋野さんが「何もないけど寝る場所はあるから家に泊まってもかまへんよ。」と言ってくれた。

彼女と話もしたいし、27日にありがたくお世話になることにした。

樋野かおり支配人

樋野さんがやってきた。

挨拶もそこそこに、すぐに地下の劇場に降りて画と音のチェックにかかった。

天井が高く広い空間でスクリーンも大きかった。

席はひな壇になっていて四角いパイプ椅子の坐面にはクッションが置かれていた。

映写担当の松浦さんは若い女性だった。

挨拶を交わし、さっそく画を流してもらった。

音はモノラルだった。少し音を上げてもらった。

耳障りでない音だった。

音質を言葉で表現するのは難しいが、モノラルはモノラルで私は好きだ。

画の方も暗いところもきちんと見えていてばっちりだ。

ロビーに上がると、藤本夫妻が来ていたので、樋野支配人に紹介。

京都の眞理子さんが娘の穂積さんをつれてやってきた。 時間になり、樋野さんがスクリーンの前に立ち、お客さんに挨拶。私も短くご挨拶・お礼をする。

15人弱ほどのお客さんだった。私も一番後ろの席に座り一緒に観た。

とてもいい反応だった。無事上映が終わり、ロビーに出ると、若い女性に話しかけられた。

8年ほど前、宮下さんの家で農業研修をしていた人で、その時私とも会ったことがあるという。

ちょうど映画を撮り始めた頃で、私もうっすらっと思い出した。 真知子さんに恐る恐る感想を聞いてみると、「めっちゃよくはないけど、よかったわ。」と言った。

俊之さんは、時間をかけて撮ったことがわかるわ、というようなことを言った。

「穂積がめずらしく映画を気に入ったみたいでアンケートに感想を書いたから後で読んでね。」と眞理子さん。

初日が無事終わった。

藤本夫妻と眞理子さん親子で昼食を食べに行くことになった。

俊之さんが「この辺でしか食べられないものがあるんや。

日本そばの焼きそばや。」彼の案内でそのメニューのある食堂までみんなで歩く。

活気のある食堂でメニューも豊富だった。

私はもちろんその「そばやき」を注文した。

グラスビール100円のサービスをしていたので、飲める人は注文し、乾杯した。

[…]

旅する映画 その33 京都シネマ 最終日

2009年7月24日。 8:00。起床。

居間に降りていくと、もう攻さんは机の前に座り伝票整理をしたり、受注の電話を受けたりしていた。

その背中を見ながら、こうして毎朝早くから家族のために働く、これぞ大黒柱だなあと思った。

上原攻さん

そして私は朝ごはんをいただいた。

ご飯としじみの味噌汁、私の好物のちりめん山椒、ナスと大根の漬物などをおいしくいただいた。 9:00。攻さんにお礼を言って上原家を後にする。

七子さんがバス停まで見送ってくれた。

「色々お話できてよかったわ。京都に来る事があったらまた泊まりにきてください。今度は朝散歩しましょう。」

とはんなりと言った。

そして私は最終日の劇場に向かった。

20人以上のお客さんが来てくれていた。

上映途中、ロビーに出た。

横地支配人にお礼と挨拶をしたかったが不在とのこと。

でも社長ならいるとのことで、しばらくすると神谷雅子さんがロビーにやってきた。

この時初めてお会いした。

ご挨拶をして、京都シネマで上映させてもらって本当によかったとお礼を言った。

上映後に自主上映をやりたい人が何人かいた話をすると、とても喜んでくれた。そのうち横地支配人もやってきたのでまたお礼を言い、三人で少しお話をした。

間もなく神谷さんは仕事にもどっていったので、私は横地支配人にこの1週間の上映中、気がついたことをいくつか伝えた。

横地さんは最後に「次の作品をつくったらまた持ってきて下さい。」と私に言った。

とても嬉しかった。

そして私はシアター2にもどり映画を観た。最後の上映後、ロビーでたくさんの人に声をかけられた。

亀岡の農民連に勤める女性が興奮した面持ちで、「ぜひ亀岡で上映会をやりたいです。」と言った。

その場でDVDと資料を渡した。

若い女性が3人、目を輝かせて「とても面白かったです。」と言った。

柳馬場通りのヤチヨさんに教えられて観にきましたという人が3人もいた。

眞理子さんもまた来てくれた。

最終日、とても気分よく締めくくることができた。

「回収率がすごくいいですよ。」と回収した1週間分のアンケートをスタッフから受け取った。

分厚いアンケートの束だった。

また宝物が増えた。

後でじっくり読もう。

帰って文代さんや宮下さんにも見せよう。

四条。祭りでにぎわっていた

四条の店で眞理子さんと昼食をとった。

今日から3日間お世話になる藤本真知子さんから留守電が入っていた。

格安チケット屋で切符を買った方がいいよと。

それで眞理子さんに付き合ってもらい、JR舞子駅までのチケットを購入した。

やはりかなり安かった。

そして時間があるからとそのまま舞子駅までついてきてくれた。

本当にお世話になった。

舞子駅に降り立つと、目の前は海だった。

少し眺めて大きく息を吸い込んだ。

それから藤本真知子さんに電話をかけた。

言われた場所に行くとすぐに車が私の近くにきた。

たぶん藤本真知子さんだろうと思った。

ショートヘアで目鼻立ちのはっきりした女性だった。

挨拶をして私は助手席に乗り込んだ。

「これから明石大橋が見える眺めのいいレストランに夕食を食べに行きましょう。」と真知子さんは言った。 群馬で自主上映会をやってくれた竹渕進さんが、神戸での上映を知り、泊まらせてもらえる友人がいるからと、私に藤本真知子さんを紹介してくれた。

[…]

旅する映画 その32 京都シネマ6日目

2009年7月23日。 朝、宿をチェックアウト。

荷物を預け、劇場に向かう。 20人ほどのお客さんだった。

平日にこれだけの人が劇場に足を運んでくれたことに感謝の気持ちがわいてくる。

眞理子さんが今日も観に来てくれた。

上映後、女性から声をかけられた。

撮影の一坪悠介くんのお母さんの一坪由美さんだった。

ご挨拶とお礼をした。

そして眞理子さんも一緒に3人でお昼ごはんをご一緒することになった。

由美さんに「何が食べたいですか?」と聞かれ、私はあっさりしたものと答えた。

そして劇場から程近いとても美味しい和食のお店に連れて行ってもらった。

私と眞理子さんはビールとおいしそうな日本酒を注文した。

由美さんが車なのが残念だった。

そして和食のコースをいただきながら、映画のことや一坪君のことなどをお話した。

とても楽しい時間だった。

由美さんとお会いできてよかった。

食事をごちそうになったお礼を言って別れた。

その後、眞理子さんと喫茶店で少しおしゃべりをした。

京都シネマでの上映が始まってから、彼女はほぼ毎日観に来てくれている。

彼女は今、娘さんの病気のことなどで大変な時期なのだ。

そんな時だからこそ、一人真っ暗な映画館の中で「空想の森」を観ている時間だけは、自分も新得にいる感じがして幸せな気持ちになれると彼女は言った。

そして毎回、感じたり考えたり寝てしまう場所が違って面白いと。

私は思わず笑ってしまった。

こんな見方もあるのだなあ。

そして眞理子さんは「明日の最終日も観に行くからね。」と言った。

そして私は宿で荷物を受け取って上原七子さんのお宅へ向かった。

四条烏丸から小一時間ほどバスに揺られた。

言われたバス停で降りると、七子さんが自転車で迎えに来てくれていた。

私の荷物を荷台にのせてくれた。

5分ほど歩いてお宅についた。

上原商店という看板が入り口のドアにあった。

工場で扱うような部品やありとあらゆるものを扱う店をご主人とやっているのだ。

玄関先にチラシをはっていてくれた

七子さんは主に家で電話番と事務、ご主人は配達などで外をまわっていて19:30をまわらないと帰ってこないそうだ。

ふと玄関の脇に目をやると掲示板があった。

そこに「空想の森」と「バオバブの記憶」のチラシがはってあった。

「バオバブの記憶」の監督の本橋成一さんは自由学園出身で共働学舎の理事をしている。

家にあがって、食卓に座り麦茶をいただきながら七子さんとお話をした。

食卓の脇に電話とファックスがあり、その横に事務机。その前には座布団。

脇には商品カタログが山と積まれていた。

「ここが私の仕事場なの。」と七子さん。

話している最中にも電話が鳴り注文が入る。

18:00を過ぎると、七子さんは「今日の仕事はこれでおしまい。」と言って、書類を片付け、座布団を机の下に入れた。

「店仕舞い、簡単でしょ。」と笑った。

そして夕食の支度に台所に入った。 19:30過ぎ、ご主人の攻(おさむ)さんが仕事から帰ってきた。

ご挨拶をして早速夕食になった。

食卓いっぱいに七子さんの料理が並んだ。

ピーマン、ししとう、なす、ゴーヤチャンプルなど久しぶりの野菜がいっぱいの家庭料理がとても嬉しかった。

攻さんは大のビール好きでそれも瓶のモルツを必ず2本ほど飲む。

[…]